インハウスSEOとは、企業がSEO対策を外部の業者に委託せず、自社内で実施することを指します。自社の社員やリソースを活用してSEO対策を行うことで、コスト削減やノウハウ蓄積などのメリットが期待できます。
インハウスSEOを成功させるためには、適切な手順と体制、そして自社に合った特徴を見極める必要があります。特にインハウスSEOが向いている企業の特徴として以下のようなものがあります。
この記事では、インハウスSEOの基本的な概念から具体的な手順、そして成功に導くためのポイントまで、Web担当者の方々が必要とする情報を網羅的に解説します。インハウスSEOを検討している企業担当者様は、ぜひ最後までお読みください。
インハウスSEOとは?
インハウスSEOとは、企業がSEO対策を外部の業者に委託せず、自社内で実施することを指します。自社の社員やリソースを活用してSEO対策を行うことで、コスト削減やノウハウ蓄積などのメリットが期待できます。
インハウスSEOを実現するためには、SEO施策を内製化していく必要があります。内製化には、以下の要素が必要です。
- SEO対策に関する知見を持った人材
- SEO対策を実行できる体制
SEO対策を外注することも可能ですが、社内状況との連携がスムーズに進まなかったり、正社員に依頼するよりも費用が高額になるリスクがあります。そのため、インハウスSEOを実現することで、SEO施策をスムーズかつ低コストで実行できるようになります。
ただし、インハウスSEOには専門知識やスキルが必要となるため、担当者の育成や体制構築に時間がかかる場合があります。この点には注意が必要です。
インハウスSEOが向いている企業の特徴
インハウスSEOを実現するには内製化を進める必要性があります。このインハウスSEOが向いている企業の特徴についてここでは解説していきます。
特徴①|スキルや経験のある人材がいる
インハウスSEOを成功させるためには、SEOに関する専門知識や経験を持つ人材が不可欠です。SEO対策に必要なスキルとしては、以下のようなものがあります。
- コンテンツSEO
- 外部SEO
- 内部SEO
これらの多様な知見を持った人材が社内にいることが非常に重要です。もちろん、全てをこなせる人材である必要はありません。例えば、コンテンツSEOだけでもできる人材を採用し、担当者自身が学習していくことで、将来的には全てのSEO対策に対応できる人材へと成長することも可能です。
もし正社員としての採用を実施している場合、全てを兼ね備えた人材だけを求めるのではなく、成長意欲や向上心があることを前提に採用を進めるのが良いでしょう。
特徴②|社内にSEOへの理解がある企業
SEOは、短期的な成果を求める施策ではなく、中長期的な視点で取り組む必要があります。そのため、経営層や関係部署がSEOの重要性を理解し、協力的な姿勢を示すことが重要です。
担当者自身も、SEOの重要性を社内で「SEOを知らない人」にも分かるように説明できるようになっておくべきです。そのためには、社内での根回しなどの地道な作業が必要になるでしょう。
こうした社内でのSEOへの理解が進むことで初めて、SEO人材の採用や内製化支援のコンサルタント導入が可能になります。この点は意外と重要なので、意識しておきましょう。
特徴③|これまでSEO施策を打ったことがある
過去に外注であれSEO施策を実施した経験がある企業は、インハウスSEOをスムーズに進めやすいでしょう。特に、SEO業者とのコミュニケーションの窓口に立ったことのある担当者であれば、インハウスSEOへの理解を深めることができるでしょう。
なぜなら、SEO業者とのコミュニケーション担当をしていた人材であれば、業者が実施した施策の一部始終を見ていたことになりますし、業者が使っていた資料などを参考にしながら施策を進めることもできるでしょう。
インハウスSEO体制を構築するための手順
インハウスSEOは、3つのフェーズに分けて段階的に進めることが重要です。それぞれのフェーズで必要な取り組みを理解し、着実に進めることで、インハウスSEOを成功に導くことができます。
フェーズ①|体制構築期(個人プレーに近い)
体制構築期では、インハウスSEOに必要な人員やリソースを確保し、体制を整えます。人材の確保は最も難しい部分ですが、社内での根回し活動をしっかりと行いながら、採用を進められるようにしておきましょう。
人材を確保できた場合は、SEO担当者となる人材と協力しながら体制構築を進めていきましょう。SEO対策に必要な人材としては、以下のような人材が挙げられます。
- ライター
- SEOディレクター
- エンジニア(SEOに強いと尚良い)
- デザイナー
ただし、これらの人材を全て揃える必要はありません。その時々の戦略に応じて必要な人材を集めるようにしましょう。もちろん、最初から全てを正社員で揃えて分業化するのではなく、エンジニアやデザイナーは外注しながら、最初はSEO担当者自身が全て手を動かすくらいの気概も必要でしょう。
フェーズ②|施策実行期(チームが出来上がってくる)
施策実行期では、具体的なSEO施策を実行に移しましょう。そのためには以下の点について押さえるようにしましょう。
- 施策実行期には、戦略に基づき具体的なSEO施策を実行に移す。
- SEO担当者は、自ら手を動かし、積極的に施策を進めることが重要。
- リソース不足の場合は、外部委託などを活用し柔軟に対応する。
まずは、自社でしっかりと戦略を練った上で施策を進めるようにしましょう。もし、戦略の立案に不安がある場合は、スポットでコンサルタントに相談するのも良いでしょう。
実行すべき施策が確定したら、手を動かしていくようにしましょう。よくある社内のSEO施策が進まない要因として、SEO担当者が手を動かしきれていないケースが多く見られます。
最初は、格好つけずにSEO担当者自身がライティングからサイト内のコードの軽い修正程度は実施するようにしましょう。リソースが不足してきた際には、最初は業務委託でフリーランスに発注するなど、柔軟に対応していくと良いでしょう。
フェーズ③|運用改善期(成果次第で運用体制を改善)
ある程度、SEOの施策が回り出してくるとSEO担当者1人では回らなくなり、徐々にチーム化が進んできます。そこで、チーム自体の運用を改善していく必要性があります。そのために押さえるべき点は以下の3点です。
- SEO担当者をプロジェクトマネージャーとした複合的なチームの構築
- 重要なポジションの内製化によるインハウスSEOの精度向上
- 自社に最適なSEO対策チームの構築
まず施策を実行していく中で、徐々にSEO担当者をプロジェクトマネージャーとして、外注や社員、インターン等を複合的に活用したチームが出来上がってきます。
そうした際に、徐々に社内でのSEO施策のなかで重要なポジションの部分を内製化を進めていく必要性があるでしょう。そうすることで、インハウスSEOの精度が徐々に上がってくるでしょう。
ただ、全てを社員化する必要性もありません。完全なインハウスSEOを求めるのではなく、自社に最適なSEO対策チームを構築することに全振りしましょう。
インハウスSEOを実現するメリット
インハウスSEOを導入することで、企業は様々な恩恵を受けることができます。
これらのメリットを最大限に活かすためにも、インハウスSEOの導入を検討する企業は、自社の状況をしっかりと見極める必要があります。
メリット①|社内にノウハウが蓄積される
インハウスSEOに取り組むことで、SEOに関する知識やノウハウが社内に蓄積されます。これは、長期的な視点で見た場合、非常に大きなメリットと言えるでしょう。
これは、新卒社員やインターンなど、新しいメンバーがチームに加わった際に、ノウハウを継承できるというメリットにつながります。長期的にインハウスSEOを維持できれば、ノウハウの蓄積が進み、「強いSEOチーム」を構築することができます。
メリット②|社員がフルで施策を実行できる
外部委託の場合、どうしてもコミュニケーションコストや時間的制約が発生します。
しかし、インハウスSEOであれば、社員がフルタイムでSEO施策に取り組めるため、より効率的かつ効果的な施策実行が期待できます。外注に発注した場合、どうしても多重下請け構造によってマージンなどが無駄に発生し、コストが嵩んでしまいます。
一方、社員が実行する場合は、基本的にマージンが発生しないため、コストを抑えて施策を進めることができます。
メリット③|他部署との連携がスムーズに進む
SEO施策は、Webサイトのコンテンツやデザイン、システムなど、様々な要素が絡み合っています。インハウスSEOであれば、他部署との連携がスムーズに進み、施策の実行スピードが向上します。
特に、近年のSEO対策では、「いわゆるSEO」といった施策だけでは成果を出しにくくなっています。例えば、被リンク獲得のために取引先にリンク掲載を依頼する場合、外部の業者が実行する場合は調整に時間がかかりますが、社内のSEO担当者がいればスムーズに実行できます。
もちろん、他にも様々なケースが想定されますが、社内調整においてスムーズな実行が期待できるのは間違いありません。
インハウスSEOが引き起こすデメリット
インハウスSEOには、メリットだけでなくデメリットも存在します。
これらのデメリットを理解し、対策を講じることで、インハウスSEOを成功に導くことができます。
デメリット①|専門知識・スキルが必要となる
SEOは、検索エンジンのアルゴリズムの変化やWeb技術の進化に合わせて、常に最新の知識やスキルが求められる分野です。
社員教育や外部研修などを活用し、SEOに関する知識やスキルを習得できる体制を作りましょう。また、インハウスSEOの場合は、後述しますが、他社のインハウスSEO担当者との交流の場に参加するようにしましょう。
そうすることで、知識を大きくアップデートすることができます。インハウスSEOあるあるでもありますが、長い間自社内に籠っていると、浦島太郎状態になってしまうリスクがあります。
常に外部との交流を意識して知識をアップデートするようにしましょう。
デメリット②|他社との同業者の交流が少ない
外部業者に委託する場合、SEOの専門家から業界の最新情報や競合他社の動向などを得ることができます。しかし、インハウスSEOでは、そうした情報収集の機会が減り、視野が狭くなってしまう可能性があります。特に、インハウスSEOでは、一つの企業が持つ商材に対する知見しか蓄積されません。これが、支援会社と事業会社のインハウスSEOの決定的な違いです。
支援会社の場合、複数のクライアントを抱えるため、業界横断的なSEOスキルが身につきますが、インハウスSEOの場合は、扱える商材が、所属する企業が持つ商材の数に限られてしまいます。こうした場合は、常に他社のSEO担当者との交流の場がX(旧Twitter)では開かれているので、積極的に参加するようにしましょう。
そうすると、大体インハウスSEO同士での悩みで盛り上がることになります。私自身も元々は事業会社のインハウスSEO担当者でもあったので、他社の担当者と話すと本当に「生きた知識」を手に入れることができます。
デメリット③|業務の属人化する可能性がある
インハウスSEOでは、特定の担当者に業務が集中し、属人化してしまうリスクがあります。担当者が退職したり、異動になった場合、SEOのノウハウが失われ、施策が停滞してしまう可能性があります。また、組織化をせずに数年に渡り1人のSEO担当者しかいない場合は特に属人化しがちです。
そのためには、なるべく「チーム」体制を構築するようにしつつ、新しいメンバーをアサインすることで組織自体に新陳代謝を起こせる状況を意図的に作るようにしましょう。
インハウスSEO担当者の業務内容
インハウスSEO担当者の業務は多岐に渡ります。
業務内容 | 説明 |
---|---|
キーワード選定 | ターゲットとするキーワードを調査・選定する。検索ボリューム、競合性、自社サイトとの関連性を考慮する。 |
コンテンツ制作 | 選定したキーワードに基づき、ユーザーニーズを満たす質の高いコンテンツを作成する。記事、画像、動画など、多様な形式が考えられる。 |
内部SEO改善 | Webサイトの内部構造やコンテンツを最適化し、検索エンジンに評価されやすい状態にする。タイトルタグ、メタディスクリプション、見出しタグ、内部リンクなどを調整する。 |
被リンク獲得 | 他のWebサイトから自社サイトへのリンクを獲得する。被リンクは、検索エンジンからの評価を高める重要な要素となる。 |
CVR改善 | Webサイトを訪れたユーザーを顧客に変換する割合(コンバージョン率)を高めるための施策を行う。ランディングページの最適化、フォーム改善、CTAの改善などが含まれる。 |
分析改善 | Webサイトのアクセス状況やユーザー行動を分析し、改善点を見つける。Google Analyticsなどのツールを活用する。 |
これらの業務を理解し、適切な人材を配置することが、インハウスSEO成功の鍵となります。
業務①|キーワード選定(コンテンツSEO)
キーワード選定は、SEO対策の基礎となる重要な業務です。自社の商品やサービス、そしてターゲットとするユーザー層に関連性の高いキーワードを調査し、検索ボリュームや競合状況、検索意図などを分析した上で、最適なキーワードを選定します。
キーワード選定を適切に行うことで、ユーザーのニーズに合致したコンテンツ制作や、効果的なSEO対策が可能になります。
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業務②|コンテンツ制作(コンテンツSEO)
コンテンツ制作は、ユーザーの検索意図を満たし、検索エンジンからの評価を高めるための重要な業務です。SEOに最適化された質の高いコンテンツを作成することで、検索順位の向上を実現できます。しかし、コンテンツ制作業務はSEOの中で最も重要でありながら、最もリソースを必要とする業務と言えるでしょう。
コンテンツ制作においては、以下のような業務が発生します。
- 記事構成作成
- 執筆
- 校正・校閲
- 入稿
コンテンツ制作も、なるべく効率的に実施できるよう、外注のライターやディレクターを入れて組織化を進めるようにしましょう。ただし、組織化を進めると品質が低下するリスクもあるので、マニュアルや業務フローを最適化するなどの対策を講じるようにしましょう。
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業務③|内部SEO改善(内部SEO)
内部SEO改善は、Webサイトの構造やHTMLなどを最適化し、検索エンジンに適切に評価されるようにするための業務です。具体的には、以下のような業務が含まれます。
- タイトルタグやメタディスクリプションの設定
- 見出しタグの適切な活用
- 内部リンク構造の改善
- ページ速度の向上
モバイルフレンドリー対応など内部SEO改善を行うことで、検索エンジンがWebサイトの内容を理解しやすくなり、適切な評価に繋がります。
業務④|被リンク獲得(外部SEO)
被リンク獲得は、他のWebサイトから自社サイトへのリンクを獲得するための業務です。質の高い被リンクを獲得することで、検索エンジンからの評価を高め、検索順位の向上に繋がります。
被リンク獲得においては、以下のような施策が考えられます。
- 良質なコンテンツの作成
- 他サイトへの情報提供
- 取引先からのリンク掲載
- プレスリリース
- 寄稿
- SNSでの情報発信
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業務⑤|CRO施策
CVR改善は、Webサイトへの訪問者を顧客に変換するための業務です。業務内容としては以下のような業務が想定されます。
- ランディングページの最適化
- フォーム改善
- CTAの改善
- ユーザー体験の向上など
CVR改善を行うことで、Webサイトのコンバージョン率を高め直接的に目標に対してインパクトを与えることができます。どうしても検索順位にフォーカスが当たりがちですが、最終的なCVRが悪いと元も子もないので必ずじ
業務⑥|分析改善
分析改善は、Webサイトのアクセス状況やユーザー行動などを分析し、改善策を検討するための業務です。Google AnalyticsやGoogle Search Consoleなどのツールを活用し、データに基づいた改善施策を実施します。
インハウスSEOの体制パターン
インハウスSEOの体制は、企業の規模や状況によって様々なパターンが考えられます。
それぞれの体制の特徴を理解し、自社に最適なパターンを選択することが重要です。
パターン①|完全内製化
完全内製化とは、SEO施策に関わる全ての業務を社内で完結させる体制です。SEO担当者を自社で採用し、以下のような業務を全て内製化します。
- コンテンツ制作
- キーワード選定
- サイト分析
- 技術的な改善など
この体制のメリットは、社内の情報共有がスムーズに行える点、自社事業への理解を深めながらSEO施策を進められる点などが挙げられます。一方で、専門的な知識やスキルを持つ人材の確保が難しい、SEO施策に専念できる人員を確保することが難しいなどの課題も存在します。
パターン②|ハーフ外注(正社員+外部)
ハーフ外注とは、SEO施策の一部を外部の専門業者に委託する体制です。例えば、コンテンツ制作や技術的な改善などを外部に委託し、キーワード選定やサイト分析などは社内で行うといった分担が考えられます。この場合は特に、上流の戦略工程を自社で賄い、ライティングなどの実行部分を外部に委託するパターンが非常に多いです。
この体制のメリットは、専門的な知識やスキルを持つ外部業者に業務を委託することで、質の高いSEO施策を実施できる点、社内リソースを効率的に活用できる点などが挙げられます。一方で、外部業者とのコミュニケーションコストが発生する、費用対効果を常に意識する必要があるなどの課題も存在します。
ベンチャーや中小企業の場合、インターン生やアルバイト等の外部人材を活用することで、ほぼ完全内製化に近い状況を作り出すことに成功している企業も多くあります。個人的にはこのやり方も非常におすすめです。
まとめ
インハウスSEOの体制は、企業の規模や状況に合わせて柔軟に選択することができます。それぞれの体制の特徴を理解し、自社に最適なパターンを選択することが重要です。
もし、インハウスSEOについてさらに詳しく知りたい、または自社に最適な体制について相談したい場合は、お気軽にお問い合わせください。専門家が丁寧にお答えします。
インハウスSEOを成功させるためには、自社の状況に合わせて最適な体制を選択し、継続的な改善に取り組むことが重要です。ぜひ、この記事を参考に、インハウスSEOの導入を検討してみてください。