Googleが提唱するAMP(Accelerated Mobile Pages:アンプ)は、モバイル端末でのWebページの表示速度を高速化するためのフレームワークです。AMPは、Webサイトの表示速度を向上させることで、ユーザーの離脱率を抑制し、SEO効果を高める可能性を秘めています。
また、一時はモバイル検索結果で、AMPページがカルーセル形式で優先的に表示されるなどの優遇措置がなされていました。ただ、現在はこうした優遇措置は終了しており、必ずしもAMPを導入する必要性は高くないと言えるでしょう。
AMPを導入することで、以下のようなデメリットも存在します。
- デメリット①|運用コストが大きい
- デメリット②|ページデザインが崩れる可能性がある
そのため、AMP導入はWebサイトの特性や目的に合致しているかを慎重に検討する必要があります。
この記事では、AMPの仕組みから導入によるメリット・デメリット、SEOへの影響、具体的な導入方法まで詳しく解説します。AMP導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
AMP(アンプ)とは?
AMP(Accelerated Mobile Pages)は、モバイル端末におけるウェブページの表示速度を高速化するためのオープンソースのフレームワークです。
AMP はスピード重視で設計されているため、高速の読み込みが可能です。ブラウザでは AMP HTML を簡単に(そのためすばやく)解釈することができますが、その理由としては、通常の HTML より簡素化されていること、そしてページの読み込みが遅くなる一般的なコーディングの問題を回避できる設計になっていることが挙げられます。
引用元:Accelerated Mobile Pages(AMP)について|Google 広告 ヘルプ
大前提として、ページの読み込み速度が遅いだけで離脱率が上がるだけでなくコンバージョン数も減少することになります。そこで、スムーズですばやい読み込みが可能なAMPを導入することで、デザイン性を損なわずにユーザーにページを表示することができるようになります。
また、AMPを導入することでSEOに対して良い影響を与えることができます。それは、Google検索はページスピードがランキング要素の一つとして取り扱っているため、AMPによりページスピードを上げることでモバイル検索で上位表示されやすくなるからです。
さらに、AMP導入はユーザー体験の向上にもつながります。ページの読み込み速度が向上することで、ユーザーのストレスを軽減し、快適な閲覧体験を提供できます。
AMP(アンプ)の仕組み
AMPの仕組みを理解することは、Webサイトの表示速度改善に役立ちます。AMPは、Webページの構造を最適化し、不要な要素を排除することで高速化を実現しています。主な特徴は以下の2点です。
これらの特徴により、AMPページは通常のWebページと比較して、平均で4倍以上高速に読み込まれるとされています。
仕組み①|リソースの最適化
ウェブページを構成する様々なリソースを効率的に処理することで、読み込み速度を向上させています。具体的には、HTML、CSS、JavaScript、画像といった要素に対して、それぞれ最適化を施しています。
例えば、独自のHTMLタグを使用し、ページの構造を簡素化することで、軽量なHTMLコードを実現しています。(ex. <img>
タグの代わりに<amp-img>
タグを使用することで、画像の読み込みを最適化するなど)
技術 | 説明 | 効果 |
---|---|---|
HTMLの制限 | 使用できるHTML要素や属性を制限 | ページ構造の簡素化、レンダリングの高速化 |
CSSのインライン化 | CSSをHTMLに直接記述 | HTTPリクエスト数の削減、読み込み速度向上 |
JavaScriptの非同期読み込み | JavaScriptの読み込みを遅延 | HTMLの解析とレンダリングの優先、表示速度向上 |
画像の遅延読み込み | 画像を必要な時にだけ読み込み | 初期表示の高速化 |
これらの制限により、AMPページのHTMLコードは通常のページよりも大幅に軽量化されます。ます。
仕組み②|配信の最適化
コンテンツをユーザーに効率的に配信する仕組み(Google AMP Cache)も、AMPの高速化に貢献しています。
GoogleがAMPページをキャッシュし、CDN (コンテンツ配信ネットワーク) を通じて配信することで、世界中どこからでも高速にアクセスできるようにしています。この仕組みを、Google AMP Cacheと言います。
Google AMP キャッシュは、ウェブに公開されている有効な AMP コンテンツのキャッシュ コピーを提供します。Google AMP キャッシュからコンテンツを直接提供することで、高速なユーザー エクスペリエンスを実現します。
引用元:概要 | Google AMP キャッシュ
CDNは、世界中にサーバーを配置し、ユーザーに近いサーバーからコンテンツを配信することで、アクセス速度を向上させる技術です。GoogleのCDNを利用することで、AMPページは世界中のユーザーに高速に配信されます。
AMPによる優遇措置は終了している
Googleは2021年6月に、AMPページに対する特別な優遇措置を終了しました。
Google 検索のトップニュース カルーセル機能は、Google ニュースのポリシーを遵守している限り、すべてのニュース コンテンツを含むように更新されます。つまり、AMP 形式を使用する必要がなくなり、ウェブに関する主な指標のスコアやページ エクスペリエンスのステータスに関係なく、どのページもトップニュース カルーセルの表示対象となります。
引用元:ページ エクスペリエンスの更新に対応するための期間、ツール、詳細情報|Google検索セントラル
以前はモバイル検索結果で、AMPページがカルーセル形式で優先的に表示されていましたが、現在はこうした優遇措置はなくなっており、AMPの導入がSEOに直接的な影響を与えることはなくなりました。そのため、必ずしもAMPを導入する必要性は高くないと言えるでしょう。
この変更により、AMPの導入自体がSEOに直接的な優位性をもたらすことはなくなりました。
AMP対応によるSEO効果
AMP対応によるSEO効果は、直接的な優遇措置は終了したものの、依然として間接的に大きな影響を与えています。主な効果は以下の2点です。
これらの効果により、ウェブサイトのパフォーマンスが全体的に改善され、結果としてSEO効果につながります。
効果①|ユーザービリティーが向上する
AMPの導入により、モバイルユーザーのウェブサイト閲覧体験が大幅に向上します。これは、ページの読み込み速度が劇的に改善されることが主な要因です。
これらの改善は、間接的にSEOにもポジティブな影響を与えます。Googleは、ユーザーエクスペリエンスを重視しており、滞在時間やバウンス率などの指標を検索順位の決定要因の一つとして考慮しているからです。
ページ エクスペリエンスとは、ユーザーがモバイルまたはデスクトップデバイスでウェブページの操作を行った際の、情報そのものの価値以外に関するエクスペリエンスの尺度となるシグナルのセットです。これには、ウェブに関する主な指標(ページの読み込みパフォーマンス、インタラクティブ性、視覚的安定性に関する実際のユーザー エクスペリエンスを測定する指標のセット)が含まれます。また、モバイル フレンドリー、HTTPS、煩わしいインタースティシャルに関するガイドラインといった既存の検索シグナルも、これに含まれます。
引用元:ページ エクスペリエンスの Google 検索結果への影響について|Google検索セントラル
効果②|検索順位の向上が見込める
AMPの導入により、検索順位の向上が期待できます。これは、Googleがページ速度を検索ランキングの要因の一つとして考慮しているためです。
Google では、サービスでもウェブで も スピードにこだわっていることをご存知かもしれません 。その取り組みの一環として、本日、検索ランキング アルゴリズムに「サイト速度」という新しい要素を取り入れることになりました。サイト速度は、ウェブサイトがウェブ リクエストに応答する速度を反映します。
引用元:ウェブ検索ランキングでのサイト速度の使用 | Google 検索セントラル ブログ
ただし、AMPの導入だけで検索順位が劇的に向上するわけではありません。Google公式もサイト速度よりも結局、ユーザーの検索意図に以下に応えているかの方が重要であると述べています。
サイト速度は新しいシグナルですが、ページの関連性 ほど重要ではありません 。現在、当社の実装では、サイト速度シグナルの影響を受ける検索クエリは 1% 未満であり
したがって、AMPの導入を検討する際は、自社のウェブサイトの現状分析や競合調査を行い、導入によるメリットとデメリットを慎重に検討することが重要です。
AMP対応によるデメリット
AMPの導入には多くのメリットがありますが、同時にいくつかのデメリットも存在します。これらのデメリットを理解し、適切に対処することが、AMPを効果的に活用する上で重要です。主なデメリットは以下の3点です。
デメリット①|運用コストが大きい
AMPの導入には、一定の技術的な知識と労力が必要であり、これが運用コストの増加につながります。
これらの運用コストは、特に小規模なサイトや限られたリソースしか持たない組織にとっては大きな負担となる可能性があります。ただし、これらのデメリットに対しては、以下のような対策を講じることで、ある程度軽減することができます。
そのため、AMPにこだわるよりもユーザーの役に立つコンテンツ制作を進める方が良いでしょう。
デメリット②|ページデザインが崩れる
AMPの導入により、ページデザインが崩れる可能性があることは、多くのウェブサイト運営者にとって大きな懸念事項です。デザインが崩れる理由には以下のAMPの性質が関わっています。
- レイアウトの制限
- JavaScriptの制限
- フォントの制限
- 画像の扱い
これらの制限により、オリジナルのウェブページと完全に同じデザインをAMPで再現することは困難な場合があります。
まとめ
AMPはモバイルページの表示速度を高速化するための技術であり、ユーザー体験の向上やSEOに貢献する可能性を秘めています。しかし、GoogleによるAMPページの優遇措置が終了した現在、必ずしも導入する必要性は高くないと言えるでしょう。
AMP導入を検討する際は、メリットだけでなく、運用コストの増加やデザイン制限、機能制限といったデメリットも考慮する必要があります。特に、リソースが限られている小規模サイトでは、AMP導入による費用対効果を慎重に見極めるべきです。
最終的には、Webサイトの目的や特性、ターゲットユーザーなどを考慮し、AMP導入の必要性を判断することが重要です。もしAMPを導入する場合は、Googleが提供するガイドラインやツールを活用し、正しく実装することで、最大限の効果を得られるように努めましょう。