オウンドメディアを成功に導くためには、単なるSEO施策や記事制作ではなく、全体を見据えた戦略構築が求められます。
戦略が曖昧なままでは、コンテンツの一貫性が失われ、ターゲットに響かず、最終的な成果にもつながりません。目的設定からターゲット設計、キーワード戦略、分析改善の仕組みまでを統合的に設計することで、初めてメディアはビジネスの成長を後押しする武器となります。

本記事では、オウンドメディアにおける戦略の定義から設計の手順、成功事例までを体系的に解説します。初期構築や運用改善に悩んでいる方は、戦略設計の視点から見直すことで道筋が見えるはずです。
- オオウンドメディア戦略の定義と戦術との違い
- 戦略設計が必要とされる4つの理由
- 成果を出すための戦略設計6ステップ
- 成功企業に共通する戦略的特徴と事例
オウンドメディアにおける「戦略」とは?
オウンドメディア運用において「戦略」は、単なる情報発信の羅列を脱し、成果を生むための設計図となる概念です。目的を見失わず、継続的に価値を提供し続けるためには、メディア全体の方向性と整合性を確保する戦略設計が欠かせません。
以下では、「戦略」とはそもそも何か、そしてオウンドメディアにおいてそれがどのような意味を持つのかを整理していきます。
- 「戦略」と「戦術」の違いが明確に理解されている
- オウンドメディア運用における「戦略」の役割を理解している
- 抽象的な概念で終わらず、実行に落とし込める視点を持っている
オウンドメディアにおける戦略とは?
オウンドメディアにおける戦略とは、企業のビジネスの目的を達成するために設計された「情報提供の骨組み」です。単に記事数やSEO順位だけでなく、「誰に」「どのフェーズで」「何を届けるか」を構造的に決定していく思考プロセスが求められます。
戦略が明確であれば、対策するキーワードやメディア内のカテゴリ設計、CVまでの導線などが整備され、社内外問わず迷いのない運用が可能となります。

さらに、戦略を元に実行して成果が出なくても、既存の戦略を基準にボトルネックを特定して、継続的な成果改善が可能になります。重要なのは、戦略を一度決めて終わるものではなく、戦略を実行する中で生まれる市場からのフィードバッグを元に定期的に見直すべき「動的な構造」である点です。
「戦略」についての前提理解
結論として、「戦略」とは目的達成のために全体最適を図る意思決定のことです。ビジネスにおいて戦略とは、企業が限られたリソースをどこに集中し、どのように競争優位を築くかを定める方針を指します。
この定義は、オウンドメディアにおいても適用されます。単に「アクセスを伸ばす」「記事をたくさん書く」といった局所的な活動ではなく、ビジネス目標を達成するために以下のように整理することが戦略です。
- 「何を」
- 「誰に」
- 「どのように届けるか」
「戦略」がないメディアは、テーマが散漫になり、ターゲットユーザーへの訴求力を失います。結果として、CVや問い合わせなどの成果につながらず、投資対効果が極めて悪化します。そのため、戦略とはコンテンツ単体の工夫ではなく、事業に対する俯瞰的な設計そのものと位置づけるべきです。
「戦略」と「戦術」
戦略と戦術は混同されやすい概念ですが、それぞれ担う役割は明確に異なります。戦略とは、「何を、なぜ行うのか」を定める上位の概念であり、一方で戦術は、その戦略を「どのように実行するか」を示す手段です。

たとえば、「顕在層へのリーチを売上拡大のために図る」という戦略的がある場合には、これを実現するための戦術として、「おすすめ記事の制作」や「サービスページのSEO最適化」などの具体的な施策が用いられます。
項目カテゴリ | 戦略(Strategy) | 戦術(Tactics) |
---|---|---|
目的・ゴール | 見込み顧客の獲得/ブランド認知の向上/商談数最大化 | ホワイトペーパー導線の設置/記事からLPへの誘導/CTA設計の最適化 |
ターゲット | ペルソナ設計(業種・役職・課題・検討ステージ) | ペルソナごとの検索キーワード設計/パーソナライズド記事作成 |
コンテンツ方針 | ファネルに応じたコンテンツ階層設計(認知〜検討〜比較) | 「〜とは」記事の量産/比較・ランキング記事の投入/事例記事の制作 |
両者はどちらも不可欠ですが、戦術だけを最適化しても成果に直結しないケースが多くあります。まず戦略があり、その後に戦術が位置づけられるべき順序で設計する必要があります。
オウンドメディアの戦略設計を実施する意味

オウンドメディアを成功させるには、単に記事を量産するだけでは不十分です。事業の目的と連動し、かつ継続的な成果につながる運用を実現するためには、「戦略設計」が不可欠です。戦略がない状態では、発信するテーマがバラつき、成果指標も曖昧になり、関係者の認識も揃わなくなります。
以下では、戦略設計を実施することで得られる代表的な4つの意義を解説します。
意味①|コンテンツの一貫性を保つため
戦略設計を行う最大のメリットは、コンテンツの一貫性を保てる点にあります。媒体全体に「何を誰にどう伝えるか」という共通の軸があることで、記事の内容や表現トーンがばらつかず、ユーザーに信頼感を与えやすくなります。
特に複数のライターや外部パートナーが関わる場合、戦略設計がないと品質が安定しません。制作ガイドラインやカテゴリ設計を戦略段階で定義しておけば、運用の属人化を防ぎ、長期的に強い資産を築けます。
一貫性のあるメディアは、SEO面でも検索エンジンからの評価を受けやすく、トピッククラスター型の構造により検索順位が上がりやすくなります。これが継続的な流入増加の基盤になります。
意味②|目的と成果を明確化するため
戦略設計では、メディア運用の「目的」と、それを測る「成果指標(KGI/KPI)」を明確に設定します。これにより、メディアのゴールが曖昧にならず、施策の進捗や効果を定量的に評価できるようになります。
たとえば、KGIとして「月間100件のリード獲得」を設定した場合、KPIには「記事公開数」「検索流入数」「CV率」などが設定され、運用の改善ポイントが明確になります。

目的と指標がないまま運用を続けると、施策の評価が感覚的になり、リソース配分や改善優先度の判断に迷いが生じます。成果につなげるためには、戦略設計段階で数値目標を設定し、運用の軸を定めておく必要があります。
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オウンドメディアのKPI設定ガイド|目標設定方法や指標一覧を紹介。
意味③|ターゲットへ効率的にリーチできる
戦略設計では、ペルソナやカスタマージャーニーの設計も行います。これにより、「どのユーザーに向けて、どのタイミングで、どのような情報を届けるか」が明確になり、コンテンツの訴求力が高まります。
検索キーワードやなどを踏まえて、「潜在層向けの認知・集客記事」「比較検討層向けのCV記事」など、フェーズごとのコンテンツを設計できます。この構造があることで、ユーザーの購買意欲に合わせて情報を最適に届けられるため、自然検索流入だけでなくCVにも効果的です。
結果として、少ない記事数でも高い成果を出しやすくなり、効率的な運用が可能になります。
意味④|関係者との認識を揃えるため
オウンドメディア運用には、マーケティング部門、営業部門、制作チーム、外注ライターなど、多くの関係者が関わります。戦略設計があることで、それぞれが同じ方向を向いて業務を進めることができます。
たとえば、「誰に向けた記事なのか」「どのフェーズを狙うのか」「何をゴールにするのか」が明文化されていれば、コンテンツ制作時の迷いが減り、レビューやフィードバックも的確になります。
また、戦略があれば経営層へのレポーティングや予算獲得の際にも説得力を持たせやすく、組織的な支援を得やすくなります。
オウンドメディアの戦略設計を実施する手順

オウンドメディアの運用を成功させるには、綿密な戦略設計が欠かせません。戦略設計の目的は、単なる思いつきで記事を量産するのではなく、「誰に」「何を」「どのように届けるか」を体系立てて定めることにあります。これにより、コンテンツの質やSEO効果が安定し、CVにもつながる持続的な成果が見込めます。
以下では、戦略設計のステップを6つに分けて解説します。
STEP①|目的・ゴールの明確化(KGI/KPI設計)
戦略設計の起点は、「なぜオウンドメディアをやるのか」という目的の明文化です。この目的が曖昧なままだと、制作テーマも評価指標も定まりません。まずはKGI(最終ゴール)とKPI(その達成に向けた中間指標)を設定しましょう。
KGIの例としては、「月間リード数の増加」や「採用応募の質の向上」などが挙げられます。KPIには「検索流入数」「記事公開数」「CV数」「直帰率」などが該当します。これらの指標を基に、日々の施策の評価や方向修正が可能になります。オウンドメディアのKPIには他にも以下のようなものが挙げられます。
分類 | 指標名 | 意味 |
---|---|---|
集客 | 検索順位 | 指定キーワードでのGoogle検索順位 |
表示回数 | 検索結果でページが表示された回数 | |
検索エンジンのCTR | 表示に対してクリックされた割合 | |
接客 | セッション数 | Webサイト訪問数(離脱後の再訪は別カウント) |
PV(ページビュー)数 | 閲覧されたページ数 | |
ページ内のクリック率 | CTAなど重要リンクのクリック率 | |
スクロール率 | ページ内の読了度合い | |
UU(ユニークユーザー)数 | 一定期間に訪問したユニークユーザー数 | |
追客 | CV数(コンバージョン数) | 資料請求・問い合わせなどの完了数 |
CVR(コンバージョン率) | 訪問に対するCVの割合 |
また、目的設定の際は、経営層の意向や事業部の課題とズレがないかを確認しておくことが重要です。戦略と事業方針が連動していることで、メディアの存在価値がより高まります。
STEP②|ターゲット設計(ペルソナ・カスタマージャーニー)
次に行うのは、情報を届ける「相手」を定める作業です。具体的な人物像であるペルソナを設定し、ユーザーが購買・検討に至るまでのプロセス(カスタマージャーニー)を整理します。

この設計を通じて、ユーザーが「どの段階で」「どんな情報を求めているのか」を把握できます。すると、検索意図にマッチしたコンテンツを構築しやすくなり、SEOにも強くなります。

複数のペルソナが存在する場合は、それぞれの行動フェーズ(認知・興味・比較・検討・行動)に合わせたコンテンツラインを設計する必要があります。この設計が欠けると、顧客との接点を逃すリスクが高まります。
STEP③|競合調査・市場分析
市場内でのポジショニングを見極めるために、競合他社のオウンドメディアや業界動向を分析します。自社がどの領域なら勝てるのか、狙うべき検索キーワードはどこかを明確にします。
主な調査内容は以下のとおりです。
調査対象 | 内容例 |
---|---|
獲得キーワード | ・自社が獲得していて競合が獲得しているキーワード |
被リンク・ドメインパワー | ・獲得している被リンクの質と量 ・ドメインパワーの強さ |
コンテンツの品質 | ・独自性のあるコンテンツ ・図解や写真などをリッチに使っている…etc |
CVポイント | ・ホワイトペーパーによるCV獲得 ・問い合わせによるCV獲得 |
特に、獲得キーワードや被リンクの数・質を競合と比較することで、今後自社が検索順位を上げるために取るべき施策が明確になります。たとえば、検索上位に表示されている競合が共通して獲得しているキーワードを洗い出すことで、自社が制作すべきコンテンツの方向性を具体的に定めることができます。

一方で、市場分析が不十分なまま施策を進めた場合、競合がすでに成長しきっている市場に後発で参入することとなり、目標達成までに時間がかかるリスクがあります。
そのため、競合の動向とユーザーの検索行動は必ずセットで分析するようにしましょう。
STEP④|キーワード設計及びリスト作成

戦略に基づいたキーワード戦略を設計します。検索意図とユーザーニーズを軸にキーワードを分類し、記事テーマを整理していきます。設計には以下の要素を考慮します。
- 「検索ボリューム」
- 「競合性」
- 「CVとの関連性」
よくある分類方法としては、次のような構成が効果的です。
検索意図 | キーワード例 | 対象ユーザー層 |
---|---|---|
潜在層向け | 〇〇とは 〇〇 作り方 初心者 〇〇 | 認知フェーズ |
準顕在層 | 〇〇 費用 〇〇 入手方法 〇〇 選び方 | 情報収集フェーズ |
顕在層向け | 〇〇 比較 〇〇 おすすめ | 比較・検討フェーズ |
CV直結層 | 資料請求、導入事例、○○業界向け | 行動・購入フェーズ |
ただ、上記はあくまで自社で獲得したいキーワードになります。上記だけでは網羅できない競合獲得キーワードや検索ユーザーがよく調べているキーワードの観点も含めてキーワードリストの作成を行うようにしましょう。よく言われるのが「3C分析」というフレームワークに則ってキーワード選定をすることが多いです。

STEP⑤|制作方針・構成テンプレートの策定
制作フェーズでの品質を担保するために、以下の項目を整備しておきます。
- 記事カテゴリと各カテゴリの目的
- トンマナ(トーン&マナー)の方針
- 記事構成テンプレート(H1~H3構成、CTA位置、表現のルール)
これらが整備されていないと、ライターごとに内容の方向性や品質がばらつき、成果が出にくくなります。特に、外注ライターを活用する場合は、ガイドラインの明文化が不可欠です。

また、記事の目的やペルソナに基づいて、CTAの内容や記事下部の導線設計も事前にすり合わせておくことで、成果へのつながり方が格段に向上します。
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STEP⑥|分析・改善PDCAを回す計測体制の構築
戦略は一度設計して終わりではありません。成果を出し続けるためには、運用後の計測・改善のサイクルを回す仕組みが必要です。
Google Search ConsoleやGA4などの分析ツールを活用し、以下のような指標を定点的に計測します。
- 検索順位・CTR・表示回数
- 記事別の自然検索流入
- ページ滞在時間、直帰率
- 記事単位のCV数とCV率
これらのデータに基づき、低評価記事の改善、上位表示記事のリライト、CV導線の最適化などを継続的に実施します。PDCAを仕組み化することで、メディアの成長スピードを飛躍的に高められます。
成功するオウンドメディア戦略の特徴
オウンドメディアを成果に結びつけている企業には、共通する戦略的な特徴があります。ただコンテンツを更新しているだけではなく、事業と連動し、継続的にPDCAを回す体制が整っています。以下では、特に重要な4つの特徴を紹介します。
特徴①|事業のマーケティング戦略との整合性が取れている
成功するオウンドメディアは、単なる情報発信ではなく、事業の課題解決手段として機能しています。認知拡大、見込み顧客の獲得、ブランディング強化など、マーケティング戦略と一体化して設計されています。
たとえば、SaaS企業であれば「ツールの理解促進」と「無料トライアル社数」の強化が明確なゴールとなります。このように、目的が事業戦略と直結していることで、KGI/KPIの設計もブレなくなり、社内での説明責任も果たしやすくなります。
戦略が独立していると、組織からの理解を得にくく、リソースも集まりづらくなるため、常に経営課題とリンクさせる視点が重要です。
特徴②|ターゲットから逆算したキーワード設計がされている
成果を出すメディアは、ペルソナの情報ニーズから逆算したキーワード設計を行っています。流入数が多いキーワードを狙うだけでなく、CVにつながる検索意図を重視して設計されているのが特徴です。
このような戦略では、検索ボリュームだけでなく、競合性や商材との親和性も考慮されます。さらに、カスタマージャーニーの段階(認知・比較・意思決定)に応じてコンテンツが配置されているため、読者を適切に導く構造が成立しています。
単にSEOの順位を追うのではなく、「このKWで流入した読者を、どこへ導きたいのか」という視点で設計されている点が大きな違いです。
特徴③|CVの設計までを見通している
多くの企業は検索流入やPVに注目しますが、成功するメディアは「最終的な成果=CV」から逆算して設計されています。記事ごとに想定CVが定められ、ホワイトペーパー、無料相談、資料請求など、ゴールへの導線が明確です。
特にBtoBの場合、「問い合わせ」だけでなく、ターゲットとなる見込み顧客が関心を持ちやすいホワイトペーパーなど、複数のコンバージョンポイント(CVポイント)を設計することが重要です。CVポイントを多様化することで、より多くのリードを獲得できる可能性が高まります。
このような戦略では、コンテンツ単体のパフォーマンスではなく、ビジネス成果との相関を前提として評価を行う必要があります。
CTA(コール・トゥ・アクション)の位置や文言も、記事ごとに緻密に設計され、必要に応じてABテストが実施されることもあります。
「読ませて終わり」ではなく、「読んだうえで何をしてもらうか」までを設計することにより、オウンドメディアが営業活動を補完する資産として機能するのです。
特徴④|レベルの高いコンテンツ制作体制を前提としている
戦略が優れていても、実行力が伴わなければ成果は出ません。成功するオウンドメディアは、ライター・編集者・監修者など役割分担された制作体制が確立しており、常に一定の品質を保っています。
加えて、編集ガイドラインや記事テンプレートが整備されているため、誰が執筆しても媒体の一貫性が保たれます。また、記事公開後のリライト体制や成果分析も組み込まれており、コンテンツが“作って終わり”にならない点も特徴です。
属人化した運用ではなく、体制として再現性のある仕組みが整っていることで、長期的な成長が可能になります。
オウンドメディア戦略が上手いサイトの事例
成功するオウンドメディアには、戦略設計の精度と実行力を両立している共通点があります。ここでは、実際にオウンドメディア戦略を的確に設計・実行し、成果を挙げている4つの企業を紹介します。各社の強みは異なりますが、「誰に・何を・どう届けるか」が戦略的に組み立てられている点に注目すべきです。
事例①|ナレッジ(株式会社Sales Marker)

『Sales Marker(セールスマーカー)』は、BtoBセールステック企業が提供するSaaSプロダクトです。当社では、このプロダクトへのリード獲得チャネルとして、コラムメディア「ナレッジ」を運営しています。
Ahrefsで見る限り、月次で20,000トラフィック(推定50,000セッション)を獲得しており、toBのオウンドメディアとしてはかなり大きな規模になります。

「ナレッジ」では、法人営業におけるノウハウやターゲティング手法に関する高品質なコンテンツを多数発信しており、見込み顧客との接点創出や関係構築に貢献しています。
本メディアでは、サービスの強みである「インテントデータ×ABM戦略」に基づいた情報発信を徹底しており、リードナーチャリングに大きく貢献しています。記事の品質としては、図解等をふんだんに使用し、かなり高いクオオリティーのものとなっています。。

さらに、当社のオウンドメディア成長の背景には、「インテントセールス」というキーワードを軸としたタクシー広告などのPR活動により、指名検索数を多く獲得できた点も大きく影響しています。
近年では、Googleにおけるドメイン評価に指名検索の数が影響を与えるとされており、この点もSEOの成果に寄与したと考えられます。そのアルゴリズムの傾向の恩恵をもろに被ったオウンドメディアの1事例と言えるでしょう。そして、SEOはSEOだけでは完結しないことを教えてくれる教材の一つです。
事例②|経営者から担当者にまで役立つバックオフィス基礎知識(freee株式会社)
(freee株式会社)

クラウド会計ソフトで知られる『freee株式会社』は、スタートアップ・中小企業のバックオフィス課題に寄り添った「経営者から担当者にまで役立つバックオフィス基礎知識」というオウンドメディアを運営しています。
Ahrefsで見る限り、月次で5000,000トラフィックを獲得しています。

元々は、経営ハッカーというオウンドメディアを運営しておりましたが、2023年頃からサブディレクトリーでのコラムメディアへ移行を開始しています。
コンテンツ全体の戦略としては、潜在層への認知獲得から、顕在層の比較・検討フェーズまでを網羅する記事群を整備し、顧客接点を幅広くカバーしている点が挙げられます。キーワード設計も精緻で、「会計 初心者」や「確定申告 書き方」など、検索意図に合致した導線設計が特徴です。
こうした取り組みが実現できている背景には、2015年から続く長い運営歴があり、オウンドメディア運用において「継続」がいかに重要かを示す好例となっています。
さらに、各記事からプロダクト紹介ページや操作ガイド、サポートコンテンツへとスムーズにつながっており、コンテンツとプロダクトの連動性も高いレベルで確保されています。

事例③|HubSpot公式ブログ(HubSpot Japan株式会社)

マーケティングオートメーションツールを展開する『HubSpot』のオウンドメディアは、グローバルでも高い評価を得ており、日本版でもローカライズされた高品質コンテンツが展開されています。
トピッククラスターモデルの元祖とも言える企業の一つです。Ahrefsで見る限りトラフィックも26万もあり、営業からマーケティングまで網羅的にコンテンツを発信していることが特徴です。営業マーケ領域のキーワードでは右に出るものはいないと言えるでしょう。

HubSpotの戦略的特徴は、「How to系コンテンツ」と「概念系ナレッジ」を併用している点です。SEO対策としてのキーワード戦略はもちろん、読者が体系的に学習できるように情報を構造化して提供しているため、読了率やエンゲージメントも高い水準を維持しています。
また、記事下部に関連資料や製品紹介への導線を組み込むことで、ナーチャリングの起点として機能する仕組みが完成されています。
まとめ
オウンドメディアの戦略設計は、成果を出すための「設計図」となる極めて重要なステップです。単に記事を更新するのではなく、「何を、誰に、どのように届けていくのか」を体系的に決めることで、情報発信が資産として蓄積され、ビジネス成果へとつながります。
本記事では、戦略設計の意義・手順・成功の特徴・実際の事例までを解説しました。戦略のないメディア運用では、方向性がブレやすく、成果も不安定になります。逆に、戦略が明確であれば、関係者間の認識が揃い、制作や改善も加速しやすくなります。
オウンドメディアの立ち上げ時はもちろん、運用に行き詰まったタイミングでも、戦略設計を見直すことは有効です。中長期的に成果を出すためにも、今一度、戦略の「見える化」と「共有化」に取り組むことをおすすめします。