オウンドメディアは、長期的な投資が必要になるマーケティング施策になるため、そのため、「相場感」だけで予算を決めるのではなく、事業の目的やKPIに応じて必要な投資額を明確にすることが極めて重要です。とくに、戦略設計・サイト制作・SEO記事運用・コンバージョン改善といった各工程の費用構造を把握することで、効果的な予算配分と費用対効果の最適化が実現できます。
この記事では、オウンドメディア構築〜運用にかかる各フェーズの相場を丁寧に解説し、費用を左右する主な要因、成果を出すための着眼点、具体的な見積もり手順、そして費用を抑える工夫について体系的にご紹介します。
- オウンドメディア構築〜運用にかかる費用の内訳と相場感
- 費用が変動する5つの主な要素
- 成果を出すために重視すべき4つのポイント
- 適切な予算を割り出すための3ステップ
- 費用を抑えながら運用するための4つの方法
オウンドメディアの立ち上げから運用にかかる費用相場

オウンドメディアにかかる費用は、単発ではなく段階ごとに分かれて発生します。構築初期から運用フェーズまでを見越したうえで、下記のような費用が発生するケースが一般的です。
- 戦略設計費
- サイト構築制作費
- 運用費(記事制作・リライト・被リンク施策・CVR改善・ホワイトペーパーなど)
これらの費用を理解しておくことで、投資対効果の見極めや予算設計がしやすくなります。
戦略設計費
結論として、戦略設計費は10万円〜50万円が相場です。この費用は、オウンドメディア戦略を策定するためにかかる費用になります。戦略の具体的な内容としては以下のとおりです。
- 施策の目的策定
- ターゲット・ペルソナ
- KPI策定
- カスタマージャーニー設計
- キーワード戦略・選定
また、その上でコンバージョン導線を戦略的に定義することで、媒体の成果に直結する基盤を整備できます。特に、精度の高い戦略を策定するためには、膨大なキーワードデータをリサーチする必要があるため、多くの企業は慣れているコンサルタントに依頼するパターンが多いです。
戦略設計は「初期投資」ではありますが、成果を最大化させるための「必要投資」として捉えるべきです。もし社内で設計が難しい場合は、部分的に外注するという選択も効果的です。
例えば、ターゲットや達成したい目標等は自社で設定し、キーワード選定の策定のみを業者やフリーランスに発注するのが良いでしょう。
▼関連記事
オウンドメディア戦略ガイド|目標設定から設計までの流れや事例を解説。
サイト構築制作費

サイト構築制作費は、30万円〜150万円が一般的な相場です。この費用には、以下のような業務が含まれます。
項目 | 内容概要 | 費用相場(目安) |
---|---|---|
デザイン設計 | トップページ・下層ページ含めたUI/UX設計、デザインカンプ作成 | 20〜60万円 |
CMS導入(WordPress) | WordPress初期構築、テーマカスタマイズ、プラグイン設定等 | 10〜40万円 |
コーディング | HTML/CSS/JavaScriptのマークアップ、デザインデータからのコーディング | 15〜50万円 |
レスポンシブ対応 | スマホ・タブレットなどのマルチデバイス対応設計(モバイルファースト含む) | 10〜30万円 |
SEO内部施策の実装 | メタタグ設計、構造化データ、内部リンク設計、パンくずリスト設置など | 10〜30万円 |
テンプレートを活用した構築であれば比較的安価に済みますが、オリジナルデザインや複雑な機能を盛り込むと費用は大きく跳ね上がります。
もし費用を抑えたいという企業様であれば、無料のWorpdressのテーマを活用することで、上記の内容を一定実現した上でオウンドメディアの構築が可能になります。
オウンドメディアの構築において「SEO対策が施されているか否か」が、運用後の成果の度合いを左右します。デザインを機にするのはブランディング上、重要です。しかし、デザインしかできない制作会社に頼むのは絶対に辞めましょう。SEO対策ができる制作会社やコンサル会社に発注することが良いでしょう。
運用

オウンドメディアの運用には継続的なコストが発生します。特に成果に直結する下記の施策にかかる費用は、年間で数十万円〜数百万円に及ぶこともあります。
項目 | 内容概要 | 費用相場(目安) |
---|---|---|
SEO記事制作 | キーワード設計〜構成・執筆まで一貫対応。1記事あたり2,000〜4,000文字想定 | 3〜10万円/記事 |
記事リライト | 既存記事のSEO改善、構成調整・追記・最新化対応 | 1.5〜5万円/記事 |
被リンク獲得 (外部SEO) | サイテーション設計や外部メディアへの寄稿、自然なリンク構築 | 5〜20万円/月(※品質による) |
CVR改善 | ヒートマップ分析、CTA設計、導線改善、ABテスト支援 | 10〜30万円/月 |
ホワイトペーパー制作 | PDF設計・構成・ライティング・デザイン含む(6〜12ページ程度が主流) | 20〜60万円/冊 |
これらの施策は、単体ではなく相互に影響を与えるため、バランスのとれた実行が求められます。
SEO記事制作
SEO記事の制作費は、1本あたり30,000円〜100,000円が一般的です。
費用は、記事の文字数、専門性、ライターのスキル、キーワードの競合性などにより変動します。検索意図に沿った記事構成、正確な情報に基づいた執筆、見出しやメタ情報の最適化など、検索上位表示を狙うには高度なSEOライティングが求められます。
内製すればコストは抑えられますが、ライティングの質によっては成果が出にくくなるリスクもあります。予算と目標に応じて、内製と外注の使い分けが重要です。
記事リライト
記事リライト費は、1本あたり8,000円〜30,000円が目安です。
検索順位が伸び悩んでいる記事や、情報が古くなった記事をアップデートすることで、流入の改善が期待できます。特にコアアップデート後は、コンテンツの見直しが重要になります。
既存記事の順位データやサーチコンソールのCTRを確認しながら、構成や見出しの修正、内容の追加を行うことが成果につながるポイントです。
被リンク獲得
被リンク獲得にかかる費用は、成果報酬形式で1本あたり20,000円〜50,000円が相場です。
信頼性の高い外部メディアからのリンクは、ドメインパワーの向上に寄与します。ただし、Googleのガイドライン違反にならないよう、自然な文脈で紹介される記事PRや寄稿形式が推奨されます。
無理に購入リンクを増やすのではなく、ホワイトな手法で継続的に獲得していく戦略が重要です。
CVR改善
CVR(コンバージョン率)改善に関する施策は、50,000円〜200,000円/月が目安です。
CTA(Call to Action)の配置見直しや、導線設計、A/Bテスト、EFO(エントリーフォーム最適化)などが主な施策です。メディアに訪問したユーザーを確実にコンバージョンに繋げるためには、UI/UX視点を持った設計と運用が必要になります。
LPO(ランディングページ最適化)と連動して取り組むことで、費用対効果をさらに高めることができます。
ホワイトペーパー
ホワイトペーパー制作は、1本あたり100,000円〜300,000円が相場です。
BtoB向けのリード獲得施策として非常に効果的ですが、設計〜執筆〜デザイン制作までが必要となるため、一定のコストが発生します。内容の信頼性がCVに直結するため、専門性とユーザー視点を兼ね備えた構成が求められます。
また、メールマーケティングやMA(マーケティングオートメーション)との連携を想定した設計にすることで、効率的なナーチャリングが可能になります。
オウンドメディアの費用を左右する要素
オウンドメディアの費用は、単に制作や運用の作業量だけでなく、さまざまな要因により変動します。具体的には、下記5つの要素が大きく影響を与えます。
- 競合の強さ
- 業界の専門性の高さ
- 業務の外注度合い
- 目標とするCV数
- デザインへのこだわり
これらの要素を正確に把握することで、無駄なコストを避け、適切な投資判断が可能になります。
要素①|競合の強さ
競合の強さが増すほど、費用は増加します。強い競合とは、自社が獲得したいキーワードにおいて、他の企業を差し置いて上位表示しているようなサイトのことを指します。
強い競合は、以下の点が非常に強い傾向があります。
- 記事の品質
- ドメインパワー
- サイトの構造
これらの、SEOにおいて重要な要素を充実させるには、非常に多くのリソースが必要になります。特にビッグキーワードでの上位を狙う場合は、毎月複数本の記事公開と合わせて、ドメイン評価を高める施策が不可欠です。
逆に、ニッチな領域やまだ競合の少ないキーワード群であれば、限られた予算でも成果を出しやすくなります。したがって、競合分析を初期段階で丁寧に行うことが、費用対効果を左右する重要なポイントです。
要素②|業界の専門性の高さ
業界における専門性が高まるほど、特にコンテンツ(特に記事)制作費用は高騰する傾向にあります。なかでも、法律、医療、金融といったYMYL領域では、正確性と信頼性が必須です。執筆者には高度な専門知識が求められるため、ライターや監修者の単価が上昇する傾向にあり、一般的なSEO記事の2〜3倍の費用が発生するケースも珍しくありません。
たとえば、医療系サービスを提供している企業であれば、発信する情報に対して高いレベルの医療知識の正確性と専門性が求められます。特に医療知識は、医師など限られた専門人材による確認が必要なため、監修費用が高額になるだけでなく、正確なライティングができる執筆者も少ないのが現状です。
専門性を保ちながらコストを抑えられるのは、社内に専門知識を有し、かつ執筆リソースを持っている場合に限られます。難しい場合は、専門家の外注体制を整えることを検討しましょう。
要素③|業務の外注度合い
外注範囲が広がるほど、費用も増加します。オウンドメディアの場合の外注範囲としては、以下のようなものがあります。結局、これらの業務のどこまでを依頼するかによって費用は変動してきます。
- 戦略策定
- キーワード選定
- 記事制作
- 被リンク営業
- CVR改善
- 効果測定
戦略設計から記事制作、効果測定や改善施策までをすべて外部に委託する場合、トータルコストは50万円は最低でも必要になりま。反対に、自社内で可能な工程を内製化すれば、費用は大幅に抑えられます。
これらの業務は、社内での対応可能な人材がいるか、もしくはいてもリソースが空いているか次第で、金額も変わってきます。
要素④|目標とするCV数
目標とするCV数が高くなるほど、それに見合った施策と費用が必要になるのは当然です。
たとえば、月間10件の問い合わせを目指す場合と、100件を目指す場合とでは、求められるコンテンツ数だけでなく、SEO施策の深度も大きく異なります。
特に商材単価が高いBtoB領域では、1件あたりのCV獲得にかけられるコスト上限も大きくなりやすく、それに伴い投資水準も上昇する傾向にあります。目標から逆算した適切なKPI設定と、それに応じたコンテンツ設計が不可欠です。
要素⑤|デザインへのこだわり
デザインに強いこだわりを持つ場合、構築や改修にかかる費用は上昇します。ブランドイメージを重視するBtoCサイトや、ビジュアル訴求が重要な業界(例:美容、建築、アパレルなど)では、デザイン費用が全体の中でも大きな割合を占める傾向にあります。
UI/UXに配慮した設計や、アニメーション・独自動線を取り入れたページは、制作・保守の両面でコストが高額になります。もっとも、UI/UXやブランディングを強化すること自体は、SEOにおいても有効な施策の一つです。
ただし、Google検索はJavaScriptの読み込みを苦手とするため、過度なモーションを多用したオウンドメディア構築は、かえってSEOに悪影響を及ぼす可能性があります。
一方、SEO記事において図解や独自性の高いクリエイティブを積極的に活用することは、競合との差別化に繋がるため推奨されます。ただし、売上に直結しにくい「Knowクエリ」向けの記事に過度なデザインコストを投下するのは費用対効果が合わないため、狙うキーワードごとに投資比重を調整することが重要です。
費用を抑えたい場合は、あらかじめテンプレートを活用した設計や、ミニマルなデザインを採用することで、制作工数の削減が図れます。
オウンドメディアで費用対効果を合わせるための方法
オウンドメディアは、正しく運用すれば中長期的な資産となり得ます。しかし、構築や運用にかかるコストが大きくなりがちなため、きちんと費用対効果を合わせる設計が不可欠です。ここでは、オウンドメディアの費用対効果を高めるために実践すべき具体的な方法を紹介します。
まず、以下の取り組みを押さえましょう。
- 方法①|目標設定とKPI設計を明確にする
- 方法②|コンテンツの費用対効果を可視化する
- 方法③|SEO施策と並行して指名検索を増やす
- 方法④|記事制作のコスト管理を徹底する
- 方法⑤|内製・外注をうまく使い分ける
この5つの方法を順番に着実に実行することで、オウンドメディアの投資回収効率を大きく改善できます。
方法①|目標設定とKPI設計を明確にする
オウンドメディアで費用対効果を合わせるには、最初に「何をゴールにするか」を明確に定義する必要があります。目標が曖昧なままでは、成果を正しく測定できず、コストだけがかさんでしまうからです。
ここで押さえるべきポイントは次の通りです。
- 目標(CV数、売上貢献度、リード獲得件数など)を数値で明確にする
- フェーズごとに異なるKPIを設定する(立ち上げ期・成長期・成熟期)
まず、オウンドメディアを通じて達成したい目標を、具体的な数値で明確に定めます。たとえば、「半年以内に月間30件の資料請求を獲得する」といった数値目標が必要です。ただし、こうした目標はあくまで最終ゴールであり、達成までのプロセスをフェーズごとに分解して設計することが重要です。

目標やKPIが曖昧なままでは、どこにリソースを投入すべきか判断できず、最終的に費用対効果が悪化するリスクが高まります。必ず立ち上げ段階で数値目標と各フェーズの設計を行い、チーム内で共有しておきましょう。
▼関連記事
オウンドメディアのKPI設定ガイド|目標設定方法や指標一覧を紹介。
方法②|コンテンツの費用対効果を可視化する
オウンドメディアの成功には、コンテンツ単位で費用対効果を把握することが欠かせません。どの記事が成果を生み、どの記事がリソースの無駄になっているかを可視化できなければ、適切な改善策も打てないからです。
ここで押さえるべきポイントは次の通りです。
- CVは記事単位での計測をする
- 検索順位の計測はキーワード単位で計測する
- 記事単位でユーザー行動を計測する
まず、記事制作する段階で、記事毎に以下のような目的を定めておくようにしておきましょう。
記事の種類 | 目的・役割 | 特徴 | 制作時のポイント |
---|---|---|---|
集客目的の記事 | 流入数拡大・潜在層認知の拡大・ホワイトペーパーDL | ボリュームの大きい情報収集系KWを狙う | 網羅性とユーザーニーズを満たす設計 |
テーマ性強化を目的とした記事 | サイト全体の専門性・関連性を高める | サイトテーマに沿った中長期的なコンテンツ群形成 | 内部リンク設計・サイト構造意識 |
その上で、Google AnalyticsやSearch Console、ヒートマップツール(Microsoft Clarity)などを活用して、各記事ごとの流入数、滞在時間、直帰率、コンバージョン率などを定点観測します。このデータにより、どの記事が費用対効果が高いのか、または改善が必要なのかを判断できるようになります。
方法③|SEO施策と並行して指名検索を増やす
オウンドメディアの費用対効果を高めるためには、SEO施策だけでなく、指名検索数の増加にも注力する必要があります。指名検索はサイトやブランドに対する信頼性の指標であり、SEOにも好影響をもたらします。
ここで押さえるべきポイントは次の通りです。
- SEOによる自然検索流入を確保しながら、ブランド認知を拡大する
- YouTube運用、SNS発信、PR活動なども並行して行う
- 指名検索の増加を定点観測し、効果を可視化する
現在、どの集客チャネルも「それ単体で成果を出す」ことが難しくなっています。なぜなら、競合が2010年代と比べると大幅に増えているからです。そのため、すでに認知のある大手企業であれば、必要ないかもしれませんが中小企業だと必須となってきます。
そのため、オウンドメディア単体だけでなくYouTubeやSNSでの発信、プレスリリースなどマルチチャネルでマーケティング施策全体を進めるようにしましょう。これにより、検索エンジン上での指名検索(例:「〇〇株式会社」「〇〇サービス名」)が増加し、ドメイン全体の信頼性向上にも繋がります。
SEO施策と認知施策は、両輪で強化することが重要です。オウンドメディア運用においては、この両面戦略を必ず組み込んでいきましょう。
方法④|記事制作のコスト管理を徹底する
まず、すべての記事を同じ単価で制作するのではなく、狙うクエリの重要度に応じて力を入れる記事とそうでない記事を分けるべきです。CVに直結する「Doクエリ」「Buyクエリ」については、単価の高い優秀なライターを起用してでも質を担保し、図解やコーディングでユーザービリティーの高い記事にしましょう。
一方で、認知拡大目的の「Knowクエリ」に関しては、過剰にデザインコストやリソースを投入せず、できるだけ効率的に制作する工夫が必要です。ここでコストを抑えられなければ、最終的な費用対効果が合わなくなります。
また、制作単価とその後のパフォーマンス(流入数、滞在時間、CV獲得数)を定期的に突き合わせ、PDCAを回していく運用体制も重要です。制作コストの管理を徹底すれば、オウンドメディア全体の運用効率は確実に高まります。
方法⑤|内製・外注をうまく使い分ける
費用対効果の高いオウンドメディア運用を実現するためには、すべてを外注に頼るのではなく、内製と外注を適切に組み合わせることが重要です。ただ、外注と内製の組み合わせについてはノウハウの有無や、稼働リソースの有無で変えるようにしましょう。
企業の状況 | 主な運用方法 | 特徴 | 注意点 |
---|---|---|---|
ノウハウなし・リソースなし | フル外注 | 記事制作・SEO設計・運用すべてを外部委託 | 費用負担が大きく、品質管理が必要 |
ノウハウあり・リソースなし | 戦略内製+制作外注 | 記事テーマ設計・SEO戦略は社内、制作は外注 | 戦略ブレを防ぎ、外注コントロール力が求められる |
ノウハウなし・リソースあり | 運用内製+戦略外注 | 戦略設計は外部コンサル、記事制作や運用は社内対応 | 成果検証・改善PDCAを社内で回す体制が必要 |
ノウハウあり・リソースあり | 完全内製 | 戦略設計から運用まで一貫して自社で完結(一部外部の知見を入れるためにコンサル発注) | 品質維持と属人化防止の仕組みづくりが必要 |
例えば、SEO記事制作のノウハウがあれば、そこは内製化しても良いでしょう。とはいえ、戦略設計等に経験のある人材がいない場合は、戦略策定はコンサルに発注するパターンも想定されます。これにより、自社の状況を見て必要最低限の施策
一方、医療・法律・金融など専門性が求められる記事や、売上に直結するキーワードを狙った勝負コンテンツについては、プロのライターや監修者に外注するべきです。ここではコストより成果を重視し、投資対効果を最大化します。
方法⑥|施策の成果を中長期的な視点で立案する
オウンドメディア運用では、施策の成果を短期的に求めすぎると失敗しやすくなります。検索エンジン上で信頼を得るには時間がかかり、中長期的な視点で施策を立案しなければ、費用対効果を最大化できないからです。
ここで押さえるべきポイントは次の通りです。
- 最低でも6か月〜1年単位で成長ロードマップを設計する
- 短期指標(流入数など)と中期指標(指名検索数、リード獲得)を区別する
- 初期は「勝ち筋(伸びる領域)」を見極め、リソースを集中させる
まず、オウンドメディアの立ち上げ当初は、検索エンジンからの評価が高まるまで半年以上かかることを前提に計画を立てます。この間に目先の流入数やCVに一喜一憂するのではなく、成長曲線を描くための基盤作りに集中します。
また、施策のKPIも短期・中期・長期で分けて設計します。たとえば、立ち上げ初期は「記事本数の積み上げ」や「インデックス数の増加」を目標に置き、中期では「指名検索数の増加」「リード獲得数の増加」といった本質的な成果指標に移行していきます。
特に重要なのは、早い段階で「勝ち筋」となる領域(検索上位が取れそうなテーマ、コンバージョンしやすいジャンル)を見極め、リソースを選択集中することです。闇雲に広げるのではなく、絞り込んで深堀りする戦略が中長期的な成果につながります。
オウンドメディアの成果を出すために押さえるべきポイント
オウンドメディアをただ運営するだけでは成果は見込めません。成果を出すには、下記のような4つの観点を意識した設計と改善が求められます。
- 記事の品質
- ドメイン評価
- 選定するキーワード
- 自社の商材認知(≒指名検索)
これらは互いに連動しながら検索順位やCVに影響を与えるため、単独ではなく総合的な視点で施策を進めることが重要です。
ポイント①|記事の品質
成果を出すオウンドメディアに共通するのは、記事の「検索意図を満たす精度」が高いことです。これは、Googleの評価基準における「Needs met(ニーズメット)」に該当する部分です。ニーズメットとは、検索ユーザーが求める情報を的確に提供しているかどうかを評価する指標です。
クエリと結果にはさまざまな種類がありますが、評価のプロセスは同じです。ニーズメット評価タスクでは、ユーザーのニーズに焦点を当て、結果がユーザーにとってどれほど役立ち、満足できるかを考えてください。
ニーズメット評価スライダーは次のようになります:引用元:Google品質ガイドラインp103
単に文字数を増やしたり、キーワードを詰め込んだりするのではなく、ユーザーが求めている情報を論理的に、かつ簡潔に提示することが求められます。
また、GoogleのE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)も加味し、著者や監修者の明示も欠かせません。Googleも評価指標として「E-E-A-T(Experience:経験、Expertise:専門性、Authoritativeness:権威性、Trustworthiness:信頼性)」を重視していると明言しています。
3.4 経験、専門性、権威性、信頼性 (E-E-A-T)
経験、専門性、権威性、信頼性 (E-E-A-T) は、PQ 評価においてすべて重要な考慮事項です。E-E-A-T ファミリーの中心で最も重要なメンバーは信頼性です。引用元:Google品質ガイドラインp26
記事の品質が高ければ、検索エンジンだけでなくユーザーにも評価され、検索順位の上位表示を狙うことも可能になります。
ポイント②|ドメイン評価
検索順位において、個別記事の内容だけでなく「サイト全体の評価(ドメインパワー)」も極めて重要です。
ドメイン評価は、運用歴、外部からの被リンク数、サイト構造の最適化状況など複数の要素で決まります。とくに継続的にコンテンツを発信し、ユーザーにとって有益な情報源と認識されることが、長期的な評価向上につながります。

ドメイン評価は、コンテンツの品質だけでなく、被リンクやサイテーションといった外部評価も非常に重要な要素となります。
かつては、ドメインパワー(ドメインオーソリティ)自体をGoogleが具体的な数値として公開していましたが、現在は公式に開示されていません。ただし、多くのSEOツールでは、独自の指標によって推定値を確認することができます。

ポイント③|選定するキーワード
成果を出すには、検索ボリュームではなく「検索意図と自社商材との適合性」でキーワードを選定すべきです。
情報収集フェーズのキーワードは流入数を増やしやすい一方で、コンバージョンには直結しにくいという特徴があります。比較・検討フェーズや「今すぐ系」キーワードのバランスを取りながら、集客とCVの両立を狙うことが必要です。
ポイント④|ブランド(≒指名検索)
オウンドメディアが信頼を獲得し、成果を上げるには、ブランド力の向上が欠かせません。そのひとつの指標として、「指名検索数の増加」が挙げられます。
Googleがブランド力を重視していることは、サブディレクトリサイト(外部のコンテンツを自社ドメイン配下で展開する手法)への規制方針からも読み取れます。Googleはこの対応に際して、「基本的にファーストパーティのコンテンツによってすでに確立されたランキングシグナルを利用する」と明言しています。
サイトの評判の不正使用とは、ホストサイトにおいて、基本的にファーストパーティのコンテンツによってすでに確立されたランキングシグナルを利用することを主な目的として、そのサイトにサードパーティのコンテンツを公開する行為を指します。これは、サードパーティが独自に公開する場合に比べて、当該のコンテンツがより上位にランク付けされるようにすることを目的としています。
引用元:Google ウェブ検索のスパムに関するポリシー
この方針は、Googleがサイトのブランド力をランキングシグナルとして重視していることの裏返しだと言えるでしょう。
この状態を実現するためには、SEO対策による上位表示だけでなく、YouTube運用や広告配信、PR施策などを通じて認知を拡大し、指名検索数を増やす取り組みが不可欠です。
SEO施策と指名検索施策は相互に作用するため、潜在層への認知獲得から顕在層の囲い込みまで、一貫した設計を行うことが成果につながります。
オウンドメディアの費用を抑えるための方法
オウンドメディアは継続的な運用が必要な施策であるため、無理のない予算で取り組む工夫が求められます。特に初期段階やスモールスタートで始めたい企業にとっては、以下のような方法を活用することで、効果を落とさずに費用を抑えることが可能です。
- WordPressの無料テーマを活用する
- 生成AIを活用してライティング費用を減らす
- 補助金を活用する
- クリエイティブのテンプレート化を進める
これらは単なるコストダウンではなく、長期的に見たときの「持続可能な運用体制」の構築にもつながります。
方法①|WordPressの無料テーマを活用する
サイト構築費を抑えるには、WordPressの無料テーマを活用するのが有効です。
無料テーマであっても、SEOに最適化されているものやレスポンシブ対応済みのものも多く存在します。たとえば『Cocoon』や『Lightning』などは、多くのユーザーに支持されている定番テーマであり、ある程度のカスタマイズにも対応しています。
初期段階ではまず無料テーマでスタートし、運用実績や予算に応じて有料テーマや独自開発へと移行していく形が理想的です。
方法②|生成AIを活用してライティング費用を減らす
ChatGPTなどの生成AIを活用することで、記事制作の工数とコストを大幅に削減できます。
AIは初稿のたたき台作成や、構成案の出力、要約、見出し生成といった作業を得意としています。これにより、ライターがゼロから執筆する手間が減り、編集や校正の工数も軽減されます。
ただし、情報の正確性や独自性を保つためには、必ず人の手によるチェック・リライトが必要です。AIと人の役割を明確に分けることで、品質を担保しつつ費用を抑えた運用が可能になります。
方法③|補助金を活用する
中小企業やスタートアップであれば、各種補助金を活用してオウンドメディア構築・運用の費用を一部まかなうことができます。
たとえば、「IT導入補助金」や「小規模事業者持続化補助金」などは、ホームページ制作やマーケティング施策にも適用可能です。補助率や上限金額は制度によって異なりますが、うまく活用すれば数十万円〜100万円以上のコストを削減できる場合もあります。
申請には事業計画書や見積書などの書類準備が必要となりますが、制作会社によってはサポートしてくれるところも多いため、初期段階から情報収集しておくとよいでしょう。
方法④|クリエイティブのテンプレート化
記事構成・画像・CTAボタンなど、使用頻度の高いクリエイティブ要素をテンプレート化することで、運用の効率化と費用削減を同時に実現できます。
テンプレート化によって、ライティングや入稿の工数が安定し、一定のクオリティを維持したまま大量の記事制作が可能になります。また、外注する際にもテンプレートを共有することで、コミュニケーションコストや制作ミスを防ぐ効果も期待できます。
特にオウンドメディアを複数人で運用している場合は、テンプレートの整備は中長期的な成果に直結します。
まとめ
オウンドメディアは、立ち上げから運用まで多岐にわたる工程があるため、費用感も一律ではありません。初期費用・運用費ともに、競合状況や目的、内部体制などによって大きく変動します。そのため、単なる相場感に頼るのではなく、自社のKPIと達成スピードに応じた投資判断が求められます。
費用を抑えつつ成果を出すには、無料テーマや生成AI、補助金の活用、テンプレートの整備など、実践的なコスト最適化の工夫も欠かせません。加えて、記事の品質やドメイン評価、CV設計まで含めた総合的な視点で戦略を設計することが、費用対効果を最大化する鍵となります。