オウンドメディアは、費用対効果を可視化するのが非常に難しい施策です。しかし、うまく運用できれば、他のチャネルに比べて高い費用対効果を発揮する可能性があります。
一方で、「費用対効果」とは何を指すのかを明確に定義しないまま、なんとなく施策を進めてしまうのは非常に危険です。常に広告運用や他チャネルと比較し、どの程度の費用対効果が出せているのかを確認する姿勢が求められます。
とはいえ、立ち上げ直後から費用対効果を厳密に計測する必要はありません。オウンドメディアは成果が出るまでに時間がかかる特性があるため、まずは2~3年程度、費用対効果の短期的な計測にこだわらず、必要な施策を地道に積み重ねていくことが重要です。

本記事では、オウンドメディア運用における費用対効果の全体像を解説します。具体的には、目的別の算出指標(ROAS、CPA、セッション単価、売上)を示し、適切な集計タイミングや改善アプローチを整理します。
- オウンドメディアにおける主要な費用対効果指標と算出方法
- 集計タイミングと長期評価の重要性
- 成果を最大化するための具体的な改善手法と運用体制の作り方
【目的別】オウンドメディアの費用対効果の算出方法

オウンドメディア運用で費用対効果を正確に把握することは、戦略的意思決定に直結します。そのためには目的ごとに適切な指標を選び、数値を算出する必要があります。代表的な算出指標は次の通りです。
- ROAS(広告費用対効果)
- CPA(顧客獲得単価)
- セッション単価・PV単価
ここからは、それぞれの指標の特徴と使い方を詳しく解説します。
指標①|ROAS(広告費用対効果):全目的
ROAS(Return On Advertising Spend)は、広告費に対して得られた売上を示す指標です。オウンドメディアにおいては、運用にかかった費用が広告宣伝費に該当するため、この費用を基にROASを算出します。
ROASの算出式は以下の通りです。
「売上 ÷ 広告費(オウンドメディア運用費) × 100」
たとえば、オウンドメディアの運用費が200万円、売上が1,000万円の場合、ROASは500%となります。この数値が高いほど、広告投資の効率が良いと評価されます。
ただし、ROASは売上に基づくため、利益を直接示すわけではありません。利益率が低い商品やサービスでは、ROASが高くても経営に寄与しない可能性があります。そのため、ROASを用いる場合は必ず利益率も併せて確認しましょう。
指標②|CPA(顧客獲得単価):CV目的
CPA(Cost Per Acquisition:顧客獲得単価)は、1件のコンバージョン(CV=資料請求・問い合わせ・会員登録など)を得るために必要なコストを示します。CV獲得を主目的とするオウンドメディア運用では、最重要の指標の一つです。CPAの算出式は次の通りです。
「投資コスト ÷ CV件数」
たとえば、月間の運用コストが200,000円、CV(コンバージョン数)が20件の場合、CPA(Cost Per Acquisition)は10,000円となります。この数値を下げることが、運用効率の改善に直結します。
CPAの改善方法は複数あります。特に重要なのは、Web広告のCPAとオウンドメディアのCPAを比較し、Web広告の水準を下回ることを最重要課題として設定する点です。具体的なCPA改善施策としては、以下が挙げられます。
- LP(ランディングページ)の改善によるCVR向上
- 流入キーワードの見直し
- ターゲット精査による広告配信の最適化
注意点として、CPAはあくまで「1件当たりのコスト」であるため、成約単価やLTV(顧客生涯価値)と照らし合わせ、どの程度のCPAまで許容可能かを事前に把握しておくことが重要です。
指標③|セッション単価・PV単価|認知/ブランディング目的
オウンドメディアの目的が認知拡大やブランディングの場合、セッション単価やPV単価が重要な指標となります。これらは「1訪問あたり」「1ページ閲覧あたり」にかかった費用を示します。
算出式は以下の通りです。
- セッション単価:「総コスト ÷ セッション数」
- PV単価:「総コスト ÷ PV数」
たとえば、月間の運用コストが300,000円で、セッション数が15,000の場合、セッション単価は20円です。また、PV数が30,000であれば、PV単価は10円となります。なお、純広告などでの1PVあたりの広告単価は、一般的に20円~150円程度とされます。そのため、これらの金額を下回る施策を進めることが重要です。
こうした指標は、広告配信やSNS流入による「認知度アップ施策」の費用対効果を評価する際に役立ちます。ただし、直接的な収益につながりにくい目的の場合、短期的な評価のみで判断しないことが肝要です。
オウンドメディアの費用対効果の測るべきタイミングは2〜3年

オウンドメディアは短期的な施策ではなく、中長期的な投資対象です。オウンドメディアを運用する場合、基本的に最初は大赤字を前提として考える必要があります。そのため、費用対効果の集計や評価は、最低でも2〜3年単位で行うべきです。
特に、SEO対策を通じた集客は効果が出るまでに時間がかかります。一定の投資期間を設けなければ、多くの場合、成果と呼べるものは得られません。中途半端な投資をするくらいなら、思い切って別の投資先を選ぶ方が賢明でしょう。
実際、Googleも「SEOがビジネスに対してインパクトを与えるまでには4ヶ月から1年程度かかる」と示しています。
ほとんどの場合、SEOがあなたのビジネスに対して改善を実施して、その結果が現れるまでには4か月から1年かかります。
引用元:How to hire an SEO
SEOによる集客が成功し始めてから、事業に本格的なインパクトを与えるまでには、プラス1年程度を要すると考えられます。したがって、費用対効果があったかどうかという結論を出せるのは、2年から3年のスパンで見極めるべきといえるでしょう。
短期間で集計を行うと、短期的な広告施策や一時的なトレンドに引っ張られた数字に振り回されやすくなります。オウンドメディアを運用する場合、しばらく赤字を掘り続ける「覚悟」が必要であるといえるでしょう。
オウンドメディアの費用対効果を合わせる方法
オウンドメディア運用でROASを高めるには、複数の要素を最適化する必要があります。代表的な方法は以下の通りです。
- ターゲットとKPIの明確化
- キーワード選定の厳密化
- 内製と外注の適切な使い分け
- 効果測定と改善の繰り返し
- 無料テーマなど低コスト構築
ここから順に具体策を解説していきます。
方法①|ターゲットを明確にする
費用対効果の高いオウンドメディアを実現するためには、まずターゲット・ペルソナを設計することが重要です。なぜなら、「誰に届けるか」を定めることは、すなわち「どの市場を攻めるのか」を決めることに他ならないからです。その上で、「何を目指すか」という具体的な数値指標としてKPIを設定し、そこから逆算して施策を打つことが可能になります。
ペルソナ設計では、ユーザーの趣味・嗜好や意思決定の傾向などを、より具体的に描写するよう心がけましょう。
- 名前(仮名)
- 年齢
- 性別
- 居住地
- 勤務先企業の業種・業界
- 勤務先企業の規模(従業員数・売上規模)
- 部署名・担当領域
- 職種・役職
- 業務上のKPIや評価指標
- 所属部署の課題・悩み
- 本人の業務上の課題・悩み
- 予算決裁権の有無・影響力
- 導入検討中のツール・サービス

これらを軸に記事構成や流入施策を整えることで、ROAS(広告費用対効果)向上のための土台が固まります。さらに、ペルソナが明確になることで、そうしたユーザーがどのようにキーワードを検索するのかを整理した「キーワードジャーニー」を策定できるようになります。これにより、後のキーワード選定の精度をより高められると言えるでしょう。
方法①|KPIを明確にする
オウンドメディアの費用対効果を高める上で、KPIを設定することは非常に重要です。なぜなら、「何を目指すのか」という具体的な目標を明確化することで、初めて逆算による施策設計が可能になるからです。目指す方向が定まらないまま運用を続けても、場当たり的な対応に終始し、最終的な成果に結びつかないリスクが高まります。
KPIは、オウンドメディアの運用フェーズごとに次のように設計するのが効果的です。
段階 | 指標 |
---|---|
認知段階 | PV数、UU数 |
獲得段階 | 問い合わせ件数、資料ダウンロード数 |
売上段階 | コンバージョン(CV)件数、成約率 |
また、設定するKPIは次の条件を満たす必要があります。
- 測定可能であること
- 現実的に達成可能な目標値であること
適切なKPIを設けることで、進捗を客観的に把握でき、改善の方向性も見出しやすくなります。KPIの設定は、オウンドメディアの費用対効果を最大化するための土台であり、戦略的運用に欠かせない重要な要素といえるでしょう。
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オウンドメディアのKPI設定ガイド|目標設定方法や指標一覧を紹介。
方法②|対策するキーワードを厳選する
オウンドメディアの費用対効果を上げるためには、対策キーワードを厳選することが重要です。理由は、競合性が高く自社サイトでは表示させることが難しいキーワードにリソースを投下しても無駄です。こうしたきキーワードにリソースを貼らないよう効率化ができるからです。
特に、費用対効果を最大化させるためには、キーワード選定を以下の視点から行うことが重要です。
- 検索意図
- 検索ボリューム
- 競合難易度

たとえば、月間検索数が1,000あるキーワードでも、競合が政府系機関や上場企業ばかりの場合、中小企業のサイトが上位表示を狙うのはほぼ不可能といえるでしょう。
一方、月間500程度の検索ボリュームでも、競合が個人ブログ程度で、かつコンバージョンにつながりやすいキーワードであれば、少ない労力でリード獲得や購入者数を最大化できる可能性があります。
このように、自社のCV(コンバージョン)獲得に効率よくつながるキーワードをしっかりと見極めることが重要です。ここはオウンドメディアの費用対効果を高めるうえで極めて重要なポイントとなるため、慎重に進めるようにしましょう。なお、キーワード選定の具体的な手法や事例については、以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
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【初心者用】SEOでのキーワード選定のやり方とコツをついて解説。
方法③|内製と外注を使い分ける
オウンドメディア運用では、内製と外注のを上手く組み合わせることが重要です。理由は、全てを内製化するとリソース不足に陥り施策が進まなくなる可能性がある一方で、全てを外注するとコストが膨らむためです。
具体的な使い分け例は以下の通りです。
- パターン①|戦略(外注)+実行(内製)
- パターン②|戦略(内製)+実行(外注)
- パターン③|フル外注

上記のように適切に組み合わせることで、社内担当者はコア業務に集中でき、無駄な費用を抑えられます。戦略を外注し、実行を内製化する体制は、一定のノウハウと自社リソースを持つ企業にとって相性の良い構築パターンといえるでしょう。
一方、自社に一定のノウハウはあるものの、実行リソースが不足している場合は、実行部分の一部を外注する選択肢を検討するのも有効です。また、SEOに関するノウハウも実行リソースも不足している場合は、フル外注体制の導入が有力な選択肢となります。フル外注とは、戦略立案から記事制作、公開、分析、改善まで、SEO施策全体を外部の専門会社に任せる方式です。
このように、外注と内製を自社の状況に応じて上手に組み合わせることで、最適なオウンドメディア運用を実現できるでしょう。
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方法④|効果測定と改善を繰り返す
オウンドメディアの費用対効果を継続的に高めるためには、効果測定と改善を繰り返すPDCAサイクルが不可欠です。多くの企業では記事制作ばかりに注力し、改善活動にはほとんど取り組んでいないケースが多く見受けられます。特に、数値を詳細に計測し、CVR改善やリライトといった改善業務に力を入れている企業は非常に少ない印象です。
しかし、施策を実行するだけでは、気づかないうちに大きな機会損失を生むリスクがあります。だからこそ、しっかりと計測体制を構築することが重要です。具体的な測定項目は以下の通りです。
- 集客指標:セッション数・検索順位
- 購買指標:CV数・CVR・リードの質
これらのデータは、毎月とは言わず、最低でも3ヶ月に一度は集計しましょう。そのうえで、以下のツールを活用し、定量データに基づいて意思決定を行うことが重要です。
- Google Analytics
- Search Console
- ヒートマップツール(例:Microsoft Clarity)
感覚に頼った判断を排除し、数値主導の改善を積み重ねることで、ROASの最大化が期待できます。
方法⑤|サイト構築を無料テーマにする
オウンドメディアの費用対効果を高める方法の一つとして、初期コストを抑えることは非常に有効です。特にSEO経由での集客を狙う場合、サイト自体のデザインに過度なこだわりは不要です(もちろん、ブランディングを重視する場合は例外ですが、CV獲得が主目的であれば最低限の整備で十分です)。
サイト構築費を抑えるためには、ゼロから構築するのではなく、WordPressの無料テーマを活用する方法が効果的です。通常、サイト制作には50万円から数百万円ほどの費用がかかることもあります。弊社がおすすめしているのは「Cocoon」という無料テーマです。
Cocoonは無料でありながらサポート体制が充実しており、コーディング不要でカスタマイズの幅が広いという特徴があります。さらに、GMOグループ傘下で管理・運営されているため、セキュリティ面でも安心です。

もちろん、一定のスキルセットを持つ担当者がいる場合は別ですが、まだSEOやサイト運営に関するノウハウが十分でない方には、リスクを抑えてオウンドメディアを始められるCocoonの活用を強くおすすめします。
オウンドメディアの費用対効果が低い時の対処すべき指標
オウンドメディアの運用において、期待した成果が得られない場合は、まず原因を特定することが重要です。そのために確認すべき優先指標は以下の通りです。
- CVR(コンバージョン率)
- 選定キーワードの検索意図
- 検索順位
完全なMECE(漏れなく・ダブりなく)ではありませんが、上位3つの主要指標を見ながらテコ入れを行うことで、費用対効果の低いオウンドメディアを蘇らせる可能性があります。ここからは、それぞれの指標の内容と、それに対する具体的な改善アプローチを解説します。
優先度①|CVR
CVR(コンバージョン率)は、訪問者のうち実際に成果に至った割合を示す指標です。低CVRは、十分な流入があっても最終成果につながっていないサインといえます。特に、CV数をKPIとして設定している場合、CVRを改善するだけで費用対効果を大幅に引き上げることが可能です。
CVRの改善策として、次のような施策が考えられます。
- CTA(行動喚起)の配置や文言を見直す
- フォームや購入フローを簡略化する
- 読者の課題に直結する記事内容に修正する
CVR改善は、少ない流入でも成果を最大化できる重要なテコ入れポイントです。実際、CVR施策は比較的簡単に着手できる場合も多く、記事数の増加ばかりに意識が向いている担当者の方は、一度CVR改善に注力してみることを強くおすすめします。当者様は一度CVR改善に取り組んでみてみることをおすすめします。
優先度②|選定キーワードの検索意図
検索意図がズレたキーワード対策は、流入の質を下げ、成果に結びつきにくくします。特に、「〜とは」といった説明系のキーワード(KNOWクエリ)ばかりを狙った記事は、自社への問い合わせや購買につながりにくい傾向があります(もちろん、KNOWクエリを特定の意図で活用している場合は例外です)。
つまり、いくら検索順位が高くても、「CVにつながるユーザー層」に届いていなければ、費用対効果は上がりません。改善策は明確で、顕在層に向けたキーワードを積極的にテコ入れすることです。
KNOWクエリだけでなく、自社サービスの購買につながるキーワードがしっかりカバーできているか、改めて精査してみることをおすすめします。これはコストを抑えつつ費用対効果を高める有効な手法の一つですので、ぜひご検討ください。
優先度③|検索順位
検索順位は、オウンドメディアの集客力を左右する重要指標です。上位表示されていなければ、いくら良質な記事を書いても見られません。改善策として注目すべき点は次の通りです。
特に、競合が強いキーワードにおいては、「記事の質」だけで勝負するのではなく、関連性の高いキーワードで上位表示されているページから被リンクを獲得するなど、外部施策も併せて講じる必要があります。
また、そこまで品質が高くないものの、検索順位で10〜15位あたりを前後している記事であれば、リライトが最適な改善施策といえるでしょう。このように、上位表示されればインパクトの大きい記事に対しては、リライトや被リンク獲得などの施策を総合的に実行し、検索順位の引き上げを狙いましょう。
まとめ
オウンドメディアの費用対効果を最大化するためには、指標ごとの正確な評価と、改善を繰り返す運用体制が必要です。短期的な成果に一喜一憂せず、2〜3年単位の長期視点で、以下のような施策を積み重ねましょう。
- 目的別に適切な指標(ROAS・CPA・セッション単価・売上)を設定する
- 明確なターゲットとKPIに基づいて施策を設計する
- 内製と外注を効果的に使い分け、リソースを最適化する
- 定期的な効果測定と改善を繰り返す
- 初期は無料テーマなど低コスト手段を活用し、段階的に投資する
オウンドメディアは短期の勝負ではなく、長期的な資産構築の場です。最適な戦略設計と確実な運用改善を積み重ねることで、事業全体の成長に大きく寄与できます。
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