「指名検索」とは、企業や商品、サービス名など、明確な名称を含んだ検索のことを指します。Googleが検索アルゴリズムの中でユーザーの「指名検索」という行動を、ブランドの信頼性や実在性を示すシグナルとして評価する傾向があります。
それゆえに、指名検索数が多いサイトは、一般キーワードでの評価も相対的に高くなる傾向があります。また、Googleが保有する特許でも、指名検索を検索順位決定の要素として扱うことが明示されており、SEOの重要な構成要素として定着しつつあります。
本記事では、SEO観点からの指名検索の意義と、その効果を最大化するための具体的施策について整理します。単なる検索対策ではない、ブランド戦略としてのSEO活用のヒントを得たい方にとって、有益な内容となるはずです。
- 指名検索とは何か、一般的な検索との違い
- 指名検索がSEOに重要な理由
- 指名検索数を増やすための具体的な方法
- Web担当者が指名検索に取り組む際のポイント
指名検索の前提知識
指名検索とは?
指名検索とは、企業名、ブランド名、商品名、サービス名など、特定の名前を直接検索窓に入力して検索することです。例えば、「株式会社〇〇」や「△△サービス」といった検索がこれに該当します。
指名検索は、ユーザーが既にその企業や商品・サービスを認知しており、強い興味・関心や購買意欲を持っていることを示す検索行動の一つです。

指名検索が重要とされる理由のひとつは、Googleの検索アルゴリズムがブランド名を含んだ検索行動を「信頼の証」として評価する仕組みを持っている点です。
これにより、検索エンジンはそのブランドやサイトを「実在し、興味を持たれている存在」として理解します。加えて、指名検索は通常のリンクと同様に、検索順位の決定要因の一部とされているという特許も存在します。
指名検索と一般検索との違い
指名検索と一般検索は、ユーザーの検索意図が大きく異なります。

一般検索は、具体的な企業や商品・サービスをまだ絞り込めていない段階で行われる検索です。そのため、自社ブランドや企業名が認知、もしくは想起できていない状況です。
一方、指名検索は、ブランド名や企業名がユーザーから既に認知されているからこそ行われる検索行動です。
検索の種類 | 検索意図 | 例 |
---|---|---|
指名検索 | 特定の企業、商品、サービスに関する情報を知りたい、購入したい | ・「株式会社〇〇」 ・「△△サービス」 |
一般検索 | 特定の商品やサービスのジャンル、解決したい課題について知りたい | ・「ホームページ制作会社 おすすめ」 ・「SEO対策」 |
指名検索からの流入の特徴

指名検索は、SEOにおいて一般検索とは異なる性質と影響を持ちます。このセクションでは、CVR(コンバージョン率)の高さとアルゴリズム耐性という2つの大きな特徴に着目し、その本質を解説します。
- 指名検索はなぜCVRが高くなるのか
- 検索アルゴリズムの変動に強い理由とは何か
特徴①|CVRが高い
指名検索は、検索者がすでにそのブランドに関心を持っている状態で行われます。これは、購入や問い合わせなどの最終アクションに近いフェーズであることを意味します。
そのため、CVR(コンバージョン率)が非常に高くなる傾向があります。見込み顧客ではなく、すでに「指名」で検索しているユーザーは、意図が明確で行動へのハードルが低いためです。
特に以下のような理由が考えられます。
- 既に商品や会社の存在を知っているため、比較・検討段階が済んでいる
- サービスや製品の詳細を確認する目的で検索している
- 過去に利用経験がある、またはリピート意向がある
指名検索をしてくれるユーザーは、既に信頼や興味を持っており「あと一押しでCVに至る」状態です。このため、広告やSEOで新規流入を図るよりもはるかに高い成果が期待できます。したがって、SEO戦略としては、ただ検索流入を増やすだけでなく、指名検索をされるブランドを作ることが、より高い費用対効果をもたらすカギとなります。
特徴②|検索アルゴリズムの変動に強い
指名検索が多いサイトは、Googleの検索アルゴリズムのアップデートによる順位変動の影響を受けにくい傾向にあります。これは、指名検索が「ナビゲーショナルクエリ(目的のページへの直接アクセス)」であり、検索意図が明確であることが主な理由です。ユーザーは再検索を行う必要がなく、直帰率や滞在時間などの行動指標が自然と良好になります。
こうしたポジティブなユーザー行動は、Googleにとって理想的な検索体験と一致するため、サイト全体の評価が高まり、アルゴリズム変更時にも検索順位が安定しやすくなります。
一方で、一般キーワードのみに依存したSEO目的のアフィリエイトサイトは、評価基準が変化するたびに順位変動の影響を受けやすくなります。特にGoogleがE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)を重視する現在において、信頼性や実在性の強いシグナルとしての「指名検索」は、今後ますます重要性を増していくでしょう。
指名検索がGoogle検索アルゴリズムでどう取り扱われているか
指名検索は単なるユーザーの検索行動にとどまらず、Googleのアルゴリズムの中で“信頼性の指標”として組み込まれている可能性が高いと考えられています。このセクションでは、Googleが保有する2つの代表的な特許に基づいて、そのメカニズムを読み解きます。
- 「サイト品質スコア」と指名検索の関係
- 「検索結果のランキング」と指名検索の関係
Site quality score|指名検索の存在自体が評価基準になる
Googleが取得した特許「Site Quality Score(サイト品質スコア)」では、指名検索(ナビゲーショナルクエリ)が検索順位評価の要素として明記されています。これは、ユーザーが特定のサイトやブランドを名指しで検索する行動が、そのサイトの信頼性や認知度を示すシグナルとして扱われる仕組みです。

「サイト品質スコア(特許US 9,760,641 B1)」では、指名検索の件数がスコア算出における分子として使われ、サイトに関連する検索全体の件数が分母となると記述されています(以下引用参照)。
A site quality score can also be determined by computing a ratio of a numerator and a denominator, where the numerator is based on the count of unique queries that are categorized as referring to a particular site…
引用元:US9760641B1 – Site quality score |Google Patents
ーサイト品質スコアは、分子と分母の比率を計算することで求められ、そのうち分子は「特定のサイトを参照すると分類されたユニーククエリの件数」に基づく。
つまり、指名検索の比率が高いサイトほど「ユーザーに直接支持されている」と評価され、検索アルゴリズム上でも優遇される可能性があるということです。
Ranking search results|暗示的なリンクとして被リンクと同等の価値を持つ
特許「US 8,682,892 B1(Ranking Search Results)」では、指名検索(ナビゲーショナルクエリ)が検索順位に影響を与える重要なシグナルとして扱われています。
この特許では、ユーザーが特定のサイト名やブランド名(参照クエリ)で検索する行動が、そのリソースへの「暗示的リンク(Implied Link)」と見なされます。つまり、実際に他サイトからのリンクがなくても、指名検索という行動が被リンクと同等の信頼性シグナルになるという考え方です。

さらに、検索クエリが指名的であればリソースの評価スコアは維持され、そうでなければスコアに調整係数が加わる構造となっています。これにより、ユーザーの明確な意図が検索順位に反映される仕組みが実現されています。
“A query can be classified as referring to a particular resource if the query includes a term that is recognized by the system as referring to the particular resource.”
引用元:US8682892B1 – Ranking search results |Google Patents
ー「あるクエリが、特定のリソースを指すものとして分類されるためには、そのクエリに特定のリソースを参照するとシステムが認識する語句が含まれている必要があります。」
つまり、ユーザーが「〇〇株式会社」や「〇〇商品」で検索する行為自体が、リンクと同等の評価を持つというわけです。このような仕組みが存在することで、リアルな世界で知名度がある企業や商品が、自然検索においても上位を取りやすくなります。
指名検索のあるサイトが得られるSEO効果

指名検索が多いサイトは、Googleからの評価が高まり、SEOにおいて複数のメリットを得られます。このセクションでは、検索順位に与える具体的な影響や評価の理由について、3つの観点から詳しく解説します。
- ユーザー行動の質が検索評価にどう影響するか
- E-E-A-Tとの関係性
- 一般キーワードでも上位を獲得しやすくなる理由
効果①|ユーザー行動の質が高いので評価が上がる
Googleはユーザーの行動データを匿名化して収集し、検索結果の品質向上に活用しています。特に注目されるのが、検索後にユーザーがどのような行動を取ったかという「ユーザー行動シグナル」です。
指名検索で訪問するユーザーは、以下のような理想的な行動を取る傾向があります。
- 検索結果に表示されたリンクをすぐにクリックする
- 遷移先のページで満足し、検索結果に戻らない
- 複数ページを閲覧し、一定時間サイト内に滞在する
これらの行動は、検索意図を満たすページとしてGoogleに認識されやすくなります。つまり、ユーザー行動の質が高いサイトは、検索順位の向上につながりやすくなるのです。
特に指名検索からの流入は、目的が明確なナビゲーショナルクエリであるため、ページ遷移率や直帰率などの指標も良好になります。これは、Googleが「ユーザーにとって有益なサイト」と判断する大きな要因です。
効果②|E-E-A-Tが担保されたサイトとして認識される
Googleは検索品質の向上を目的に、「E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)」という評価基準を重視しています。特に医療・金融・法律といったYMYL領域では、このE-E-A-Tの高さが検索順位に大きく関与します。

そして、この指名検索はE-E-A-T評価を定量的に測ることができる一つの指標であると考えられます。実際に、Googleが公表した「Disinformation(偽情報)対策」に関するレポートでは、E-E-A-T(Experience, Expertise, Authoritativeness, Trustworthiness)の重要性に言及するとともに、それらの評価が定量的なシグナルに基づいて行われていることが示されています。
“The systems do not make subjective determinations about the truthfulness of webpages, but rather focus on measurable signals that correlate with how users and other websites value the expertise, trustworthiness, or authoritativeness of a webpage on the topics it covers.”
引用元:How Google Fights Disinformation|Google
ーGoogleのシステムはウェブページの真偽を主観的に判断せず、ユーザーや他のウェブサイトがそのページの専門性・信頼性・権威性をどう評価しているかに基づいた定量的シグナルに注目しています)
そして、この「定量的シグナル」は、先に出した「サイト品質スコア「や「検索結果のランキング」でも指名検索が使用されていることからもわかります。ここからもわかるように、指名検索はE-E-A-T評価の中で重要な役割を果たしていると言えるでしょう。
効果③|獲得できると一般キーワードも上がりやすくなる
指名検索が発生することで、サイト全体の信頼性が高まり、指名キーワード以外の「一般キーワード」における検索順位にも良い影響を与えることがあります。これは、Googleが「エンティティ」を基盤に検索結果の表示頻度を調整しており、指名検索が増えることでそのエンティティが強化されるためです。
エンティティとは、検索エンジンが「これは○○のことだ」と明確に特定できる、人・場所・モノ・企業などの“固有の存在”を指します。
そもそもGoogleの検索システムは、検索結果内に含まれるエンティティを特定・分類し、**出現頻度(frequency of occurrence)や関連性スコア(topicality score)**といった指標を用いて順位を決定しています。
“ranking includes ranking based on one or more ranking signals. One example ranking signal comprises a frequency of occurrence of each respective entity reference.”(§0041)
引用元:US20160371385A1 – Question answering using entity references in unstructured data |Google Patents
ーランキングには、1つ以上のランキングシグナルに基づくランキングが含まれる。ランキングシグナルの一例としては、それぞれのエンティティ参照の出現頻度が挙げられる。
つまり、エンティティが多くの検索結果やコンテンツに登場し、かつ明確に特定できる情報が付加されている場合、そのエンティティに関連するページはランキングスコアが高くなるのです。
“The system selects an entity result from the one or more entity references based at least in part on the ranking.”(§0044)
引用元:US20160371385A1 – Question answering using entity references in unstructured data |Google Patents
システムは、少なくとも部分的にランキングに基づいて、1つ以上のエンティティ参照からエンティティ結果を選択する。
これは、エンティティが検索意図と強く結びついていれば、それに関連するページが検索結果として選ばれる確率が高くなることを意味します。
指名検索を増やしつつSEO効果を最大化させる方法

指名検索は、ユーザーが自発的に企業名やサービス名を検索してくれる行動であり、SEO上の強いシグナルになります。しかし、自然に発生するものではなく、意図的に設計・施策を講じて増やしていく必要があります。このセクションでは、指名検索を増やすための代表的な3つの施策を紹介します。
- ユーザーが指名したくなる「良いブランド」を作る
- Googleに自社名やサービス名を「認識」させる
- 広告やSNSを通じてブランドを「露出」させる
方法①|Googleにブランドのエンティティを認識させる
指名検索をSEOにおいて有効な評価指標とするためには、Googleに「それがブランドである」と理解される必要があります。そのためには、Googleにエンティティとして認識させる施策が欠かせません。
エンティティとは、Googleが情報として認識・分類している「具体的な存在」のことです。たとえば企業名・サービス名・店舗名・著者名などが含まれます。検索エンジンが「このワードは固有名詞であり、特定のブランドを示している」と理解できなければ、指名検索とは見なされません。
エンティティ認識を促す施策には以下があります。
- Googleビジネスプロフィールの登録・整備
- 構造化データ(JSON-LD等)によるブランド情報の明示
- Wikipediaやニュースサイトなど外部ドメインでの言及
- SNSアカウントの一貫した運用とブランド名の統一
中でも「外部メディアでの言及」は極めて重要です。なぜなら、Googleは自社サイト内の記述だけでなく、外部からの評価や言及を通じてエンティティを確定しているからです。被リンクだけでなく、ブランド名が他サイトやSNSで「言及されること」自体が、検索評価に繋がります。
方法②|ブランドの露出を増やす
ユーザーが企業やサービスの名前を検索するためには、まずその存在を「目にする」必要があります。つまり、ブランドを知る接点を戦略的に増やしていくことが、指名検索を増やすうえでの出発点になります。
露出機会を増やす手段は、以下のように多岐にわたります。
施策 | 概要 |
---|---|
オンライン広告 | Google広告、YouTube広告、SNS広告などで名前を繰り返し表示する |
SNSマーケティング | X(旧Twitter)、Instagram、TikTokなどでの自然な話題化 |
PR・広報活動 | プレスリリースやWebメディアへの掲載を通じてブランド露出を狙う |
イベント・登壇 | 社長や担当者がイベントに参加し、会社やサービスを直接紹介する |
口コミ・レビュー戦略 | クチコミを促進し、ユーザーが自発的に言及する機会を創出する |
特に、SNSとオフラインの連携が鍵を握ります。SNS上で認知された名前が、現実世界のイベントや広告などで繰り返し露出されることで、「あの名前、どこかで見た」とユーザーの記憶に定着していきます。これが、検索という行動に結びつく導線です。
露出量が増えれば、たとえ一度では検索されなくても、接触回数が増えることで徐々に指名検索が発生するようになります。これは「ザイオンス効果(単純接触効果)」としても心理学的に裏付けられた現象です。
方法③|良いブランドを作る
どれだけ認知や露出を高めても、ユーザーにとって魅力がなく、覚えにくく、信頼できないブランドでは、指名検索にはつながりません。根本的には、「ユーザーが自ら指名したくなるブランド」であることが、最も重要な前提条件です。
この点においては、SEOの枠を超えて、ユーザーを本質的に満足させる商品・サービス設計こそが不可欠だと言えるでしょう。
まとめ
指名検索は、SEOにおける本質的な評価指標のひとつとして、今後ますます重要性を増すと考えられます。単なる一般キーワードでの上位表示を目指すだけでは、アルゴリズム変動への対応力やCVRの向上には限界があります。Googleにとって信頼され、ユーザーにとって思い出され、検索されるブランドを構築することこそが、持続的なSEO成果に直結します。
そのためには、以下の3点を戦略的に実行していく必要があります。
- エンティティとしてGoogleに正しく認識される状態を整える
- オンライン・オフラインを問わずブランドの露出機会を増やす
- 検索されるに値するブランド体験・価値を一貫して提供する
こうした施策を通じて指名検索を増やし、検索アルゴリズムからもユーザーからも信頼されるブランドを築いていきましょう。SEOの取り組みを“ブランド戦略”と捉え直すことが、これからのデジタルマーケティングにおける競争優位を確立する鍵になります。